パワーアシスト装置をはじめとした「人間機械協調システム」では、機械が人間の動作を予測することは難しく、結果として機械の動作が人間の意図とずれてしまい、本来意図した運動が機械によって妨害されてしまうことがある。
この人間の意図と機械の動作のずれ、すなわち人間側の知覚と機械側の支援のタイミングの問題に着目して、東京大学と東京工業大学などの研究チームは筋電気刺激を使った実験を行った。その結果、「知覚的同時性」を保持するための機械支援の適切なタイミングと、「知覚的同時性」を得る上で知覚の順応を促すことが有効であることが明らかとなった。
機械が人間の行動に合わせた協調支援を提供する上では、自発的意図に基づく随意運動(自発的運動)と機械からの補助・介入運動(外部操作運動)のタイミングが利用者の知覚において一致している、つまり知覚的同時性が保持されていることが重要となる。そこでまず、自発的運動の開始から外部操作運動までの時間差において、知覚的同時性が保たれる時間範囲の同定を試みた。この実験では、時間差が80-160ms程度で被検者が両運動を「同時」と感じる割合がピークに達することがわかり、機械が適切に介入できる時間範囲の手がかりが得られた。
次に、知覚的同時性を保持しやすくする手段として、人間の知覚の順応についても検討した。この実験からは、被験者を特定の時間幅に順応させると、その順応した条件によって知覚的同時性が保たれる時間幅が変化することが示唆されたといい、自発的運動と外部操作運動のタイミングが異なる場合でも、知覚の順応を応用すれば知覚的同時性を保持できる可能性が見出された。
本研究により、人間の意図と機械の動作のずれを防ぐ上で有効な知見が得られ、人間の意図に沿ってより円滑に行動を支援できる人間機械協調システムの技術開発への展開が期待される。