東京理科大学と高輝度光科学研究センターは、法科学に応用すると未知の土砂の産地を推定できる「日本全国土砂データベース」を開発しました。犯罪現場に残された土砂の産地を割り出すことで、捜査能力を大きく高めることができ、えん罪被害の防止にも役立つと期待されています。研究成果は科学雑誌「X線分析の進歩」に掲載されました。
東京理科大学によると、東京理科大学理学部の中井泉教授らは、産業技術総合研究所地質調査情報センターの協力で得られた全国3,024カ所の河川堆積物の重鉱物、重元素組成を、兵庫県佐用町にある高輝度光科学研究センターの大型放射光施設「SPring-8」を使って解析、日本地図上に重鉱物と重元素の分布を示しました。これら2種類のデータを複合的に解析することにより、未知の土砂がどの地域のものであるのか推定でき、科学捜査に利用が可能となります。中井教授らは引き続き研究を進め、未知の堆積物を測定、データベースの内容充実に努めます。
犯罪現場に残されている土砂は、事件に関係する場所を推定する重要な手がかりになりますが、長年の経験と技術を持つ人しか土砂に含まれる鉱物の解析ができず、包括的なデータベースもなかったため、捜査に十分活用することができていません。今回のデータベースは熟練した技術を必要とせず、科学的な根拠に基づく資料を提示できることから、捜査内容に説得力を与え、えん罪被害の防止にも力を発揮するとみられています。さらに、広域化が進む近年の犯罪にも対応することができます。