筑波大学生命環境系の和田洋教授らの研究グループは、メダカのエラが形成される初期段階で、エラのもとになる「くり返し構造」が作られるためにpax1という遺伝子の役割が鍵となることを発見したと発表した。
生物の体の形ができあがる途中段階では、同じような形のモジュール構造がくり返し作り出され、その後の発生過程で組織や器官の形に反映されるという。例えば、脊椎動物の背骨は、椎骨が何個も数珠のように繰り返し連なっている。これは、体節と呼ばれるくり返し構造が発達してできたものだ。体節のくり返し構造が形成される仕組みは研究が進んでおり、基本的な分子機構が解明されつつある。脊椎動物では、体節の他にエラにもくり返し構造が見られる。一般的な硬骨魚ではエラは4枚並んでいるが、このようなエラのくり返し構造の形成の仕組みついてはこれまで不明だったという。
今回、メダカのpax1という遺伝子に注目。この遺伝子の発現が表すくり返しのパターンが、エラのもとになるくり返し構造を作るための基準になっていることを明らかにした。さらに、東京工業大学と共同で、ゲノム編集技術を用いてメダカのpax1の機能をなくした突然変異体を作成したところ、エラが形成されないことが判明。最も重要な発見は、pax1の突然変異体では、pax1自身のくり返しパターンでの発現が見られなくなったことだという。本研究により、エラのくり返し構造の形成におけるpax1の中心的な役割が示された。
今後はこの成果をもとに、pax1がどのような仕組みでくり返しのパターンを生み出しているかを解明することで、生物がくり返し構造を作り出していく仕組みについて理解が進むことが期待されるとしている。