千葉工業大学では、2021年度から日本の宇宙産業の基盤を支える高度技術者の育成プログラムを開始し、その一貫として2030年度までの10年間に最大9機の衛星の打ち上げを目指すことを発表した。
2003年以降、1辺が10cmの立方体サイズで重量約1kg の「キューブサット」と言われる超小型衛星が多くの国で多数打ち上げられるようになった。電子技術・通信技術・電力技術の向上で、これら超小型衛星は一部の分野では大型衛星にも匹敵する性能を示すようになった。また、量産した場合には1機あたりの製造・打ち上げコストも低下することから、「コンステレーション」と呼ばれる複数衛星を使った超小型衛星網の構築が世界で始まっている。このような超小型衛星を新たな宇宙利用ビジネスへの展開を試みる企業が国内外で生まれており、「New Space(ニュースペース)」と呼ばれている。
このニュースペースの急速な拡大により不足してきているのが、高品質な人工衛星の設計・製造・運用を現場で支える技術者だ。国内の大学・高等専門学校においても超小型衛星が扱われてきたが、技術者教育の一貫であり、研究室ごとの散発的な取り組みの域を出ていない。
このような状況を鑑み、千葉工業大学では、建学の精神である「世界文化に技術で貢献する」に立ち返り、宇宙産業を支える高度技術者の育成を目的とした新しい教育プログラムを開始する。
このプログラムでは、2021年度の3年生を対象とした第1号衛星プロジェクト(2022年度打ち上げ予定)を皮切りに、2030年度までの10年間に最大9機の衛星の設計・製造・試験・運用体験を取り入れる実践的な教育を行う。連続して衛星プロジェクトを行うことで、学生・大学院生に技術とノウハウを蓄積すると同時に、教員側にも衛星設計・製造・試験・運用に関する教育手法を蓄積するのがねらい。将来的には日本の宇宙産業を支える高度技術者育成コースの設置も視野に入れる。
また衛星を使った地球撮影イベントなどを地域の自治体や小学校・中学校・高校などと連携して行い、地域の子供達が宇宙を入口として理工系に興味関心が持てるようなアウトリーチ活動への展開も予定している。