三重大学大学院生物資源学研究科(三重県津市)の近藤誠准教授と,愛知県立農業大学校、有限会社環境テクシスの研究グループが乳牛の飼料としてカステラの切れ端を与えたところ、乳量や乳成分で外国産トウモロコシに見劣りしないことが分かった。

 三重大学によると、カステラは商品販売できない切れ端などが生産量の約1割発生する。研究グループは母乳を分泌しているホルスタイン種の乳牛11頭にカステラの切れ端などを7%混ぜた飼料を42日間与え、トウモロコシなど穀物飼料だけを与えた事例と比較した。

 その結果、乳量、乳脂肪や乳たんぱくの含有量、乳脂肪酸組成に有意な差が見られなかった。糞便のpH(水素イオン指数)や第一胃内の微生物によるたんぱく質合成量にも変化がなく、繊維質の消化量は有意に向上していた。

 世界的な穀物需要の増加で乳牛用飼料の安定供給や価格維持が難しくなる中、日本では食用米の不足で飼料用米の生産量が大幅に低下すると予想されている。そこで、糖分やでんぷんが豊富なカステラの切れ端を乳牛用飼料として活用できるかどうか検証した。

 研究グループは食品副産物を飼料として活用することで食品廃棄物の削減が可能になるほか、飼料コストの低下につながり、牛乳の安定供給も実現できるとみている。今後は、より長期間にわたって実用化に向けた検証を行うとともに、食品副産物の飼料利用が乳牛の健康や生産性に及ぼす長期的な影響についても研究を重ねていく。

 また、大学の科学研究と農業大学校の現場実践を融合し企業と連携して実践的な課題解決に参加することで、知識や技術の習得、地域産業との結びつきを強化し、教育の質向上と人材育成に貢献する。

論文情報:【Animal Science Journal】Partial substitution of cereal grains with sugar-rich castella byproduct on nutrient digestibility and lactation performance of dairy cows

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