福井大学、鹿児島大学、スウェーデン・リンショーピング大学の研究チームは、神経性過食症に対する「治療者誘導型オンライン認知行動療法」の有効性を臨床試験で確認した。
神経性過食症は、過食と代償行動(嘔吐や下剤乱用など)を繰り返すことで深刻な健康被害をもたらす精神疾患である。専門治療を担う施設や人材が限られているため、地域による治療格差が課題である。そこで研究チームは、日本文化に適応させた「治療者誘導型オンライン認知行動療法」を開発した。文章・写真・動画などを用いたWebプログラムに治療者のガイドを組み合わせ、患者が自ら取り組む治療アプローチである。
全国6大学病院と1ナショナルセンターによる多施設共同臨床試験で有効性が検証された。対象は神経性過食症の女性患者61人で、治療者誘導型オンライン認知行動療法を受ける31人と通常治療(外来診療)のみの30人に無作為に分け、12週間後の効果を比較した。
その結果、オンライン療法グループでは週当たりの過食と代償行動の回数が平均で約10回減少したが、通常治療グループでは明確な変化がなかった。寛解率も、オンライン療法グループでは約45~55%に達したが、通常治療グループでは約13%にとどまり、統計的に有意な差が認められた。
この成果は、アジアで初めて、世界では2例目となる有効性の実証報告であり、治療者誘導型オンライン認知行動療法が神経性過食症の重症度を改善し寛解率を高める効果が示された。今後、外来通院の負担を減らし、自宅で専門的な治療を受けられる新たな選択肢として活用が期待される。