大学入試改革、高大接続システム改革は今
森上展安:山極先生から特色入試の話も出たが、高大接続システム改革の進捗状況について、高等学校を代表して高大接続システム改革会議に委員として加わっておられた宮本先生から少しお話をいただきたい。
宮本久也(都立西高等学校、全国高等学校長協会会長):3月末に報告書を出した後、現在三つの課題についてそれぞれ検討チームが動いている。大学入学希望者学力評価テスト(以下「希望者テスト」)と基礎学力評価テスト(以下「基礎力テスト」)に個別入試それぞれの課題をクリアした上で全体の設計をどうするかということです。検討準備グループから先日中間報告が出されたが、特に校長先生方の関心の高い希望者テストは、記述式の導入を前提に日程も含め以下の三案が出された。①現在のセンター試験の時期に、マークシートと簡単な記述式を実施。②その一か月前にマークシートと記述式を同時に実施する。③現行の日程でマークシートと記述式を実施し、採点は出願先の国立大学が行う。
ただどれにも問題がある。1案では記述式導入の意義が活かせるのか、私立大学の選考に間に合わない可能性がある。2案は高校教育への影響が大きい。3案は、国立大学個々の事情もあるし、私大のセンター利用の扱いをどうするか、などである。英語は4技能を見る方向が打ち出された。そしてスピーキングとライティングの2技能については民間の資格・検定試験の活用も視野に入ってきた。「読む」「聞く」の2技能は現行のセンターで、書く、話すは別日程で民間のものをという流れだ。将来的には4技能とも民間に、という案もある。個別入試では、推薦、AO、一般の区分をどうするのか。
また一般入試で、多様な学びを多面的に見ることができるのか、などといったことも問題になっている。これらとの関連から、調査書の変更も予定されている。たとえば現在よりも記入する項目やスペースを増やすなどである。またすでに始められている特色入試などと一般入試との関係をどうするかも課題だ。基礎力テストは、当面、推薦やAO入試、あるいは就職の際の採用試験には活用せず、学力向上のためのPDCA(plan-docheck-act)サイクルのチェックに使うことになっている。実施時期は当初の一斉から、最終的には各学校に任され、難易度も複数用意することになりそうで、すでに全国で12校を指定して実験も始めている。全体構想は大きいが、CBT(ComputerB a s e d T e s t i n g )、IRT(Item responsetheory)の技術も確立されていない中で、具体的にどう設計するのか。改革のスケジュールは変更せず、やれるところから始めることになっていて、来年度の4月末には具体的に公表することになっているから時間はない。