大学と高校の対話を続けよう 〜 わが校は今 〜
森上:それでは以上を踏まえ、日頃の問題意識や個々の学校の取組なども交えてお一人ずつお話しください。また京都大学とのかかわり、大学全体への要望などがあればお聞かせください。
武内彰( 都立日比谷高等学校):本校では、0から1 を生み出す創造的思考力のある生徒を育てたいと考えている。そのためには様々な科目を学び、教養の土台を作りたい。SSH では、1 年から探究活動を行い、そこから尖った生徒を選び、2、3年ではその成果を単位認定していく仕組みを作った。また都教委から、先導的に国際理解教育を行う都立学校《東京・グローバル10》の指定も受け、「グローバルリーダー育成海外派遣研修“ボストン・ニューヨーク研修”」を行った。その際、アスペン研究所へ行って食料問題の解決策について専門家にプレゼンテーションを行った。
日頃の授業と部活動に加えて様々な体験をするのは大変だが、それに取り組もうという生徒は学びの姿勢がいい。英語の授業については、日本語による文法訳読中心のものを4技能を高めるものに変え、今は生徒も楽しいと言っている。模試の偏差値は4ポイントほど下がったが、元へ戻すつもりはない。特色入試では文学部へ1名進学した。2年から探究活動をしていた生徒だ。学びのコーディネーター事業ではポスドクに来てもらっている。ELCAS には1年の女子が1名参加している。
森上:女子は元気ですか。
武内:グローバルリーダー育成海外派遣研修の参加者12名の内、8名が女子だ。
岸田裕二(都立国立高等学校):通常の授業としては特別なことはしていない。日本一といわれる文化祭では、3年生全員がクラス演劇をする。先輩からの引き継ぎがシステマティックに機能していると、トヨタから勉強に来たこともある。昭和55年には都立で初めて甲子園に出場するなど部活も盛ん。入ってくる生徒の6割が文化祭、2割が部活目当てというほどだ。当然、入試の前倒しは避けて欲しい。8月の1日、2日には京大ツアーで25名がお邪魔し、桂、吉田の両キャンパスを見学した。本校OB でもある山極総長にも1時間お話しいただき生徒はいい刺激を受けた。
山極:積極的な質問も多く、後輩に対するイメージが変わった。
大野弘(都立戸山高等学校):本校は総合力重視ということで文理別のクラス編成はしない。全体として理系が多いが、特に学年に2つずつあるSSH クラスでは1年から課題研究が始まり論文にまとめる。 今日は熊本大学医学部からの帰りだが、今年から「チームメディカル」という医学部志望の生徒を対象にしたキャリア教育を、都立病院や大学等と連携して行っている。体験実習等に取り組むうちに、向き不向きがわかってくる。学業成績が優秀だからではなく、社会貢献を目的にした医師を育てるのを特色にしたい。
京都大学を第一志望とする生徒は毎年10人以上いるが、これから実績を出していきたい。ELCAS では、京都大学の先生のご指導のおかげで、2年連続してGSC の全国大会(P6 参照)に京都大学代表として選ばれ、特に平成28年度は女子生徒が優秀賞受賞者を代表して発表することができた。SSHでポリフェノールを研究している農学部志望者の女子生徒もいる。