現実を踏まえ、地に足のついた改革を
杉山剛士校長先生(埼玉県立浦和高校)
高大接続の目指すべき方向性については、浦高がこれまで目指してきた教育とも合致するので支持したい。1988年にスタンフォード大学のトーマス・ローレンが「日本の高校」という本を著した。これはローレンが日本を訪問し、様々な高校現場での参与観察を通して考えたことをまとめたものであるが、彼は日本の教育の良さを認めた上で、日本が今後グローバルな未来社会に対応するためには、受験中心ではなく、学ぶことを中心に据えた教育を展開する必要性を指摘した。とりわけギリシア哲学の哲学者の名前や学派などの知識を問う大学入試問題を取り上げ、「アメリカ人からは考えられない」と断罪している。その状況は、その後基本的には変わってこなかったと思う。まさに大学入試を変える本気度が問われていると思う。
一方で、欧米とは文化の違いもある。改革を進めるにあたっては、改革の結果、日本の良き学校文化、例えば勉強だけでなく部活や行事なども含めて全人教育を行っている文化を失うことのないように留意する必要がある。特に複数回受験については、入試を煽ったり前倒ししたりするような動きを許してはいけない。また改革が進むことにより、例えば塾や私学にいかないと対応できないといった誤解が生まれ、経済的格差が拡大しないように留意する必要がある。システム設計は性急に行うのではなく、現実を踏まえながら地に足のついた改革をしてほしいと考えている。
「公平性」実現に大学も努力を
岸田裕二校長先生(都立国立高校)
高大接続答申では、面接や集団討論、高校の調査書、個々の 応募者の活動経歴、それに「大学入学希望者学力評価テスト(仮称)」 成績などを総合した、多面的な評価を求めています。このこと自体には賛成ですが、例えば個々の応募者の活動経歴等をどのように評価するのでしょうか。単に本人の申し出をそのまま鵜呑みにするのでは、公平性が保たれないように思います。
大学自身が長期にわたり、応募者の活動経歴を調べるなど、手間暇をかけるのであればよいと思います。それによって高校の教育は大きく変わるでしょう。