大学入学希望者学力評価テスト(仮)も複数種必要
大野弘校長先生(都立戸山高校)
一斉テストは、受験する高校生にしてみれば必要悪だと考える。現実問題としていわゆる難関大学には競争があり、自分の入りたい大学に合格するためには自分の合格可能性を知る必要がある。自分の「学力」をある程度客観的に把握できる一斉テストは、必要な存在である。
問題は、一種類のテストでは、参加している大学全てに活用を期待するには無理があることだ。現在のセンター試験で、国公立大医学部医学科に合格するには90%前後の正解率が必要であり、これでは考える力ではなくスピードと注意力を調べることになってしまう。今回の改革で2種類に分かれるのは一歩前進だと考えるが、さらに大学入学希望者用のものについても数種の問題にする必要があるのではないかと思う。
入試改革議論と並行して、高校、大学それぞれの教育改革議論を急げ
武内彰校長先生(都立日比谷高校)
「大学が生徒を選抜するための統一基準として、客観的に評価できる新たなテストが必要」というロジックで改革が進められるのであれば、首肯できない。現行の大学入試センター試験はその役割を果たしている。グローバル社会の中では、他と協働し、様々な人材の良さをつなげて新たな知を創造する人材育成が求められている。そのためには大学で真に学問探究に向かう学生を育てる必要があり、その前段階として、大学に入ることを目的にするのではなく、意欲的に学問探究に向かっていける高校生を育てることが求められている。高大接続の部分についてだけ議論が先行し、高校及び大学の教育内容についての議論が不十分であるように感じる。
複数回受験を自分の力を知る良い機会に
柳沢幸雄校長先生(開成学園開成高校)
自由に選択できるところには競争があり、その競争の厳しさは希望者の数で決まる。スポーツでは競争があり、そのためにトレーニングを重ね、試合によって自分の力量に納得することを誰も不思議には思いません。同じように大学入試も競争であり、その競争を通じて自分の力量に納得できる要素があれば、若者の自己認識が深まり、キャリア選択に良い効果を及ぼします。その点からSATのように複数回受験することのできるテストが導入されれば、自分の力量を認識する良い機会になると思います。
高校での進路指導には、従来以上のきめ細かさが求められる
竹鼻志乃校長先生(豊島岡女子学園高校)
高校では一斉テストによる学力評価を行い、大学ではアドミッションポリシーに基づく多面的・総合的評価による入学者選抜を行うという方向性には賛成。今後大学の個別選抜が多様化していったとき、生徒一人ひとりの志望を叶えるために、各大学の受験情報の的確な提供など、従来以上にきめ細やかなサポート体制が学校に求められるようになると思う。
前回の座談会記事はこちらから
■京都大学総長と首都圏進学校校長座談会 第1回 〜大学と高校の対話を始めよう〜
山極 寿一 先生
1975年3月 京都大学理学部卒業
1977年3月 京都大学大学院理学研究科修士課程修了
1980年3月 京都大学大学院理学研究科博士後期課程研究指導認定
1980年5月 京都大学大学院理学研究科博士後期課程退学
1980年6月1日 日本学術振興会奨励研究員
1982年4月1日 京都大学研修員
1983年1月16日 財団法人日本モンキーセンターリサーチフェロー
1988年7月1日 京都大学霊長類研究所助手
1998年1月1日 京都大学大学院理学研究科助教授
2002年7月16日 京都大学大学院理学研究科教授
2009年4月1日 京都大学教育研究評議会評議員(2011年3月31日まで)
2011年4月1日 京都大学大学院理学研究科長・理学部長(2013年3月31日まで)
2012年4月1日 京都大学経営協議会委員(2013年3月31日まで)
2014年10月1日 から現職
東京都立国立高等学校出身