1. はじめに

筆者はこれまで本サイトに2本のエッセイを寄稿した。1本目の「アクティブラーニングによる課題解決型産学連携講義の意義と課題」では、アクティブラーニング(AL)における一形態としての課題解決型(PBL)講義、その中でも企業と連携した産学連携講義を題材に、ALやそれを取り巻く議論の問題点について触れた。

 そこでの主張点は3つある。第一に、近年のALに関する議論は手法としてのALにばかり傾注しているが、ALにおいて重要なのは、受講生がいかに主体的・能動的に講義に参加するかということであり、その手法は二の次であるはずだという点である。第二に、ALにおいて重要なのは、受講生自身がどれだけの課題に直面するかということであるべきだという点である。第三に、教員が果たすべき役目は、受講生自身が気づいていない課題・問題を指摘し、それを解決するための手助けを行うことだという点である。

2本目のエッセイである「何故、アクティブラーニングがうまくいかないか」では、形式的にALを行っているだけではALが教育効果を生み出すかどうかは怪しく、教員が受講生の成長にこだわりをもち、それを果たすために教員自身も主体的・能動的に教育を行う、いわば、アクティブティーチングこそがALを成功させる決定要因となるということを指摘した。

これら2本のエッセイを寄稿した前後に、いくつかの高校でALに関する講演・研修を行って欲しいというご依頼を受けたり、ALに関するシンポジウムに招かれるなど、ALにまつわる取り組みで悩んでいる高校教員の方々と直接接し、ALに対する疑問や指摘・批判を耳にする機会があった。そこで本稿を含む4本のエッセイを通して、それらの疑問や指摘・批判に応えるかたちで、筆者自身のALに対する考えを述べたいと思う。

筆者に特に多く寄せられたのは、以下の7つの疑問・指摘である。

(1)ALでは扱われるべき題材やテーマ、あるいは専門領域が重要なのではないか。
(2)ALを行えば座学が必要ないのか。あるいは、ALにおいて知識の提供をいかに行うべきなのか。
(3)大規模教室におけるALをいかに行うべきか。
(4)ALでは意欲の低い受講生に能動的に講義に参加させるためにどうすれば良いのか。
(5)高度な、あるいは充実したALを行えるのは高偏差値校だけではないか。
(6)ALを行うと、受講生を一律に、平等に扱うことが難しいのではないか。
(7)ALにおける成績評価はどのように行うべきか。

順に私なりの考えを述べていくことにしよう。

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中京大学

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10学部20学科を擁する全国有数の総合大学。教育力や研究力の向上、社会連携、国際化、卒業生連携の強化を推進しています。自ら考えて行動することのできるしなやかな知識人や、学術とスポーツのさらなる殿堂を築き上げ、実社会で活躍できる能力や実践力、豊かな人間性を身につ[…]

坂田 隆文

中京大学総合政策学部教授、博士(商学)、中京大学教育推進センター委員会能動的学修推進部会部会長。名古屋大学、名古屋市立大学、金城学院大学非常勤講師。マーケティング戦略論、流通論、商品企画論を主な専門とし、「面白さ」と「わかりやすさ」と「有益さ」という3つを重視した講義・研修で定評がある。近著に『1からのマーケティング・デザイン』(共編著、碩学舎)、『1からの商品企画』(共著、碩学舎)がある。近年では名古屋で若手企業人を集めた異業種交流勉強会を主宰するなど、活動の場を広げている。詳細は担当ゼミHP(http://www.sakataseminar.jp/)にて。