1. はじめに
筆者はこれまで本サイトに2本のエッセイを寄稿した。1本目の「アクティブラーニングによる課題解決型産学連携講義の意義と課題」では、アクティブラーニング(AL)における一形態としての課題解決型(PBL)講義、その中でも企業と連携した産学連携講義を題材に、ALやそれを取り巻く議論の問題点について触れた。
2本目のエッセイである「何故、アクティブラーニングがうまくいかないか」では、形式的にALを行っているだけではALが教育効果を生み出すかどうかは怪しく、教員が受講生の成長にこだわりをもち、それを果たすために教員自身も主体的・能動的に教育を行う、いわば、アクティブティーチングこそがALを成功させる決定要因となるということを指摘した。
これら2本のエッセイを寄稿した前後に、いくつかの高校でALに関する講演・研修を行って欲しいというご依頼を受けたり、ALに関するシンポジウムに招かれるなど、ALにまつわる取り組みで悩んでいる高校教員の方々と直接接し、ALに対する疑問や指摘・批判を耳にする機会があった。そこで本稿を含む4本のエッセイを通して、それらの疑問や指摘・批判に応えるかたちで、筆者自身のALに対する考えを述べたいと思う。
筆者に特に多く寄せられたのは、以下の7つの疑問・指摘である。
(1) | ALでは扱われるべき題材やテーマ、あるいは専門領域が重要なのではないか。 |
(2) | ALを行えば座学が必要ないのか。あるいは、ALにおいて知識の提供をいかに行うべきなのか。 |
(3) | 大規模教室におけるALをいかに行うべきか。 |
(4) | ALでは意欲の低い受講生に能動的に講義に参加させるためにどうすれば良いのか。 |
(5) | 高度な、あるいは充実したALを行えるのは高偏差値校だけではないか。 |
(6) | ALを行うと、受講生を一律に、平等に扱うことが難しいのではないか。 |
(7) | ALにおける成績評価はどのように行うべきか。 |
順に私なりの考えを述べていくことにしよう。