2. アクティブラーニングにおける題材、テーマ選択という問題
既に拙稿でも述べたことであるが、筆者は普段担当するゼミにおいて、企業と連携したかたちで商品提案や企画提案を学生に行わせている[1]。いくつかの高校での研修でこの経験について話したところ、個人的には非常に苦笑せざるをえなかった経験ではあるが、複数の教員から、このような取り組みに対して「企業との産学連携などというのは非常に低俗なことであり、ALでは、もっと高度な(高尚な、学術的・学問的な)テーマで学生指導すべきだ」と指摘されたことがある。
このような指摘に対する筆者の見解は、「ALというのは題材やテーマを選ばずとも、受講生が彼(女)自身の課題を克服できる仕組みがあればそれで良い」というものである。もちろん、筆者がマーケティング・商学を専門にしているから企業との産学連携というかたちをとっているという事情はある。しかし、学問に貴賎はないというのが筆者のスタンスであり、理系だろうが文系だろうが、主要科目だろうが周辺科目だろうが関係ないはずだ。
たとえば、筆者が担当するゼミの学生たちが約半年かけて中日ドラゴンズに提案した販促企画がある。これは、近年若者のプロ野球離れが進んでいる中で、学生たちの同世代である若者たちに球場に足を運ばせたりテレビで野球観戦させたりするためにはどうすれば良いかというテーマで検討を重ねるというものであった。
学生たちはもちろん自身が若者であるが故に、若者の感覚をもっている。しかし、その感覚のどれが若者特有のものであり、どれが老若男女に共通したものであるのかということについては非常に疎いのが実情である。そのような中で「若者特有の行動にはどのようなものがあるか」というブレーンストーミングを重ね、若者特有の行動の中でも球場への集客につながるものを抽出し、その中から中日ドラゴンズが実現可能なものを具体化させていくというプロセスを経ることによって、最終的には「若者が日常的に購買するペットボトル飲料にQRコードをつけ、それを用いると球団や選手の情報が得られるようにしてはどうか」という提案を行った。その提案が実際に活かされたのが、2016年3月15日から中部圏の小売店頭に並べられるようになった「ドラゴンズウォーター」である(写真1・2)。