世界をよりよくするために、東京大学が目指すもの
東京大学は今年4月に創立139年を迎えました。この間、世界に多くの研究を発信し、世界をリードする多くの先輩たちを送り出してきました。また国内においては政界、官界、財界、医学界、法曹界など幅広く多くのリーダーを送り出しています。
特に戦後、日本の経済が大きく発展するのに合わせて、それを率いる人を育ててきました。しかし今、世界は多くの問題を抱えています。資源枯渇、地球環境破壊、世界金融不安、地域間格差の拡大、宗教対立など、問題は地球規模でかつ深刻化しています。今年になってからの世界情勢をみても、国際的な金融不安に始まり、中東や東アジアの緊張など、世界はより不安定な方向に向かっているように思えるのです。ヒントはどこにあるのでしょうか。
科学技術の発展が解決してくれるだろうと思う人もいるかもしれません。しかし、科学技術自体は課題を解決しないのです。それを活用し、解決に向かわせるのは考える人間たち、つまり皆さん自身なのです。
昨年、大変うれしいことに、東京大学の特別栄誉教授、梶田隆章先生がノーベル物理学賞受賞されました。東京大学の卒業生でノーベル賞を受賞したのは 8人目になります。日本がアジアにあって圧倒的な学術の先進国であることを誇りに思うとともに、この伝統をさらに発展させていく責任を感じさせるできごとでした。
私たちはこうした世界情勢、歴史を鑑み、東京大学が果たすべき役割について考え、『東京大学ビジョン2020』にまとめて昨年10月に発表しました。そこで大学を 世紀の地球社会に貢献する「知の協創の世界拠点」と位置づけました。協創という言葉に込めた意味は、大学の独りよがりではなく、社会と共に新しい価値を創り出していく、という意味です。また、全体を貫く理念を「卓越性と多様性の相互連環」としました。世界的に優れている研究成果、教育現場の「卓越性」と、いろいろな学問、さまざまな考えをもった人が集まる「多様性」とが絶えず連動することが、学術をダイナミックに進化させます。東京大学はこのようにして、新たな価値として社会に伝える場となりたいと考えています。