知のプロフェッショナルとは

 これまでの偉大な先人たちのように、既存の常識を超える新たな発明や発見をしたり、幅広い教養と深い専門性、リーダーシップを武器に世界を舞台に活躍したり、知をもって人類社会に貢献するような人物を、私は「知のプロフェッショナル」と呼んでいます。この「知のプロフェッショナル」を目指すには、特に大学の1年から4年の学部生段階において三つの基礎力を身につけることが不可欠です。

一つは「自ら新しいアイディアや発想を生む力」。東京大学では、世界最先端の知の探求を目指しその担い手の育成を目指していますが、そこは、先人によるお手本のない世界でもあります。先生から学ぶことだけに満足していては、既存の知の限界を突破することは永遠にできません。

二つ目が「考え続ける忍耐力」です。最先端の知を追求する中で、正解にたどり着くための道筋は誰にもわかりません。そもそも正解があるか否かもわからないのです。そこで求められるのは、単に「考える」だけではなく、何日も、何週間も、時には何ヶ月も、倦むことなく考え続けることです。一瞬のひらめきによって生み出されたとされる天才の歴史的な発見も、実はほとんどの場合、「考え続ける忍耐力」の産物です。

三つめが「自ら原理に立ち戻って考える力」です。大学に残って研究者を目指す場合、特に気をつけなければならないのは、学問は高度化すればするほど専門化し、細分化される傾向にあるということです。その中で、袋小路に迷い込んだ経験を持たない幸運な研究者はむしろ稀です。それを救うのがこの力。原理に立ち戻れば、自分が今どこに立っているのかが確認できます。その上で、常に「何のために」と問い続けることで、進むべき方向を見定められるのです。

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東京大学

明治10年設立。日本で最も長い歴史を持ち、日本の知の最先端を担う大学

東京大学は東京開成学校と東京医学校が1877(明治10)年に統合されて設立されました。設立以来、日本を代表する大学、東西文化融合の学術の拠点として、世界の中で独自の形で教育、研究を発展させてきました。その結果、多岐にわたる分野で多くの人材を輩出し、多くの研究成[…]

大学ジャーナル編集部

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