3月に新刊「学問からの手紙ー時代に流されない思考ー」(小学館)を上梓しました。発刊月に京都大学生協書店で月刊売り上げ第一位を頂くなど、ありがたい限りです。まだ一ヶ月たらずですが少しづつ感想を頂いており、今回はそれをもとに考えを深めたいと思います。

『細かい点を取り上げて議論するような本じゃない』(東工大・准教授)

 とてもありがたいご感想です。事実、拙書に頂いた感想のほぼすべてが、著者の論に対して何か意見を言うというものではないんです。なんと言ったらいいか、ご自身の志や今の研究に至る経緯などをとうとうと語られるものが多いんです。

 もちろん著者の未熟さから、読者にとって「ほんとにそうかな?」といったような気になる点も多々あるでしょう。しかしそれを個々にピックアップして指摘する気にはならないらしいのです。これはなぜなのか? おそらくは、この本が何かを主張したり、「・・すべき!」といった意見を述べたりしておらず、あるいは、これまで知らなかった知識を得てもらおうというものではないことが理由からではないでしょうか。あえて言うなら、考えを促す本。だとすれば学者冥利につきるというものです。

『軽快な語り口と整った文章とは裏腹に、一ページ一ページをめくるのがとても重たい。自分自身の学問との向き合い方を問い直され続けるような。院生だけでなく、学部生、中高生、いろんな人たちに届いてほしい「手紙」である。』(Twitterにてフォロワーの方から)

 これもまた不思議ですが、お読みいただいた多くの現役研究者の方々が、学部生や中高生にも本書を読むことを勧めておられます。とても嬉しいことです。たしかに本書は学問や大学について語ってはいますが、本当はそれらの根底にある生きることにおける本質そのものについて述べたつもりですので、研究や大学関係以外の方、そして学部生や中高生にも響くであろうというご感想をいただいたくことができて、わずかながらもその本質に迫れたのではないかと安堵しています。ただ、実はまだ中高生の方からのご感
想は私には届いていません。そこでもし本紙の読者から何かしらの感想をいただけたら、この場で取り上げさせていただきたいと思います。勉強させてください。

『引き込まれつつ考えているとなかなか進まず本当に良い本です』(Twitterにてフォロワーの方から)

 実は、私が「良い本」と思うのは、まさになかなか読み進まない本なのです。一行読んではふと考え、車窓を眺めて思考にふける・・・(myベスト読書タイムは新幹線か京阪電車)。半日かけて1ページも読み進まないという時もあります。まさか自分の本がそのように読まれるようになるとは驚きでした。ありがたいことです。

 以上、拙書の振り返りをさせてもらいましたが、お伝えしたかったのは、知識を得ることもさることながら、それと同等かそれ以上に、「考える」ことが大事だということです。情報的な単なる知識なら教えることはできます。しかし「考える」ということは絶対に教えられません。「考える」というのは自らが感じ、自らが想うことでこそ発動される身体的行為です。どうやら本書も少しはそれに貢献しているようで、本当に嬉しい限りです。(つづく)


 

京都大学
学際融合教育研究推進センター
准教授 宮野 公樹先生
1973年石川県生まれ。2010 ~14年に文部科学省研究振興局学術調査官も兼任。
2011~2014年総長学事補佐。専門は学問論、大学論、政策科学。南部陽一郎研究奨励賞、日本金属学会論文賞他。著書に「研究を深める5つの問い」講談社など。

 

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大学ジャーナルオンライン編集部

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