上智大や学習院大は志願者数増加、千葉工業大は共通テスト利用方式が大幅増

 個別の私立大の志願状況について、大学通信ONLINEの2021年入学志願者速報を見ると全ての私立大で一律に志願者数が減少している訳ではありません。2021年度入試では入試制度を大きく変えた私立大がいくつかあります。その代表格は早稲田大、上智大、青山学院大、立教大、学習院大などです。中でも上智大と学習院大は、新規に共通テスト利用方式を導入することで注目されていましたが、結果として上智大、学習院大ともに志願者数が微増となりました。立教大も主に共通テスト利用方式で志願者数が増加しています。

 これに対して、早稲田大、青山学院大は予想されていた通り志願者数が減少しています。入試改革の理念と受験生の志向の間でどう折り合いをつけるか、あるいは折り合いは勘案しないで理念を貫くのか、非常に難しい問題がそこにはあります。ただ、入試改革の成否は志願者数だけで測れるものではありません。どのような受験者層に支持されているのか、それが目指す改革理念の方向性と整合しているのか、など時間をかけて検証することになるでしょう。

 こうした中で目を引くのが、千葉工業大です。共通テスト利用方式が全学部で増加しており、前年の志願者数の1.3倍以上にのぼる学部もあります。千葉工業大は新型コロナウイルス禍による経済情勢の悪化を受けて、受験生の進学支援のために共通テスト利用方式(前期・中期・後期)の受験料を免除しています。つまり、無料受験です。かなり思い切った施策ですが受験生の志向に合っていたようです。この共通テスト利用方式の無料化ですが、多少入試に詳しい方であれば、自大学で試験を実施しない分、実施の経費が低廉なのではないかと考えるかも知れません。

 ただ、実際は出願データの処理、合否判定作業、合格発表・通知など一連のフローは他の入試方式と全く変わりはありません。試験実施と採点処理はありませんが、試験運営のコストは必要なのです。加えて、大学入試センターに対して、成績提供手数料を志願者1人の成績を1回請求するごとに支払っています。こうしたことから、共通テスト利用方式の受験料無料化は、どの大学でもできそうではあるものの意外に実現が難しいのです。大学内の実務を知る方であれば、受験料無料化の学内調整を考えただけでも気が遠くなることでしょう。

参考サイト:
大学通信ONLINE 2021年入学志願者速報
https://univ-online.com/exam/

合格者数は私立大全体では昨年並みの見込み、年内入試の合格者数増加も影響する

 昨年に続き、私立大志願者数が減少となりそうですが、合格者数は昨年並みになるか、あるいはやや増加すると思われます。個々の大学が置かれた状況によって異なりますが、一般的に志願者数が増えれば合格者数も増加します。逆に、志願者数が減少した場合は合格者数も減少します。ただ、昨年は全体の志願者数が減少しましたが合格者数は増えていました。大規模な私立大で入学定員超過率の調整が一段落したことと、新増設された学部・学科(新設大学も含む)などの影響もあったと考えられます。

 そのため、今年も合格者数は私立大全体では昨年並みかやや増加するものと見られています。このことから入試の難易度を示す指標の1つである倍率は低下すると予想されます。この傾向は今後も続いていきますので受験生から見れば、大学進学を目指す上での競争環境が年々緩和されることになります。

 また、これから出願できる後期(二期)入試、3月入試ですが、昨年から志願者数が減少に転じています。入学定員超過率の調整が一段落したことで、合格者数の調整弁としての役割が失われていることと、学校推薦型選抜、総合型選抜などによってすでに年内に入試を終えている受験生が年々増加していたためと考えられます。年内入試での合格者ですが今年は昨年以上の人数になっているものと予想されます。前述のように国公立大でも1600人以上の募集人員増加とそれによる合格者数の増加があると考えられます。その分、一般選抜を受験する大学志願者の実人数が減少することになります。私立大の年内入試の合格者数を加えてればさらにその数は増えるでしょう。

 つまり、これから行われる後期入試・3月入試は志願者数が昨年よりも減少すると見られますし、場合によっては受験生がほとんど残っていないこともあり得ます。特に定員規模の大きな大学・学部の場合、今年は志願者数の減少による大幅な倍率低下も考えられます。最後まで一般選抜に取り組む受験生にとっては、追い風となるかも知れません。

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神戸 悟(教育ジャーナリスト)

教育ジャーナリスト/株式会社KEIアドバンス コンサルティング部 部員
/大学入試ライター・リサーチャー
1985年、河合塾入職後、20年以上にわたり、大学入試情報の収集・発信業務に従事、月刊誌「Guideline」の編集も担当。
2007年に河合塾を退職後、都内大学で合否判定や入試制度設計などの入試業務に従事し、学生募集広報業務も担当。
2015年に大学を退職後、朝日新聞出版「大学ランキング」、河合塾「Guideline」などでライター、エディターを務め、日本経済新聞、毎日新聞系の媒体などにも寄稿。その後、国立研究開発法人を経て、2016年より大学の様々な課題を支援するコンサルティングを行っている。KEIアドバンスは河合塾グループのため、膨大な入試データを活用したシミュレーションや市場動向調査が可能なこともあり、将来構想・中期計画策定、新学部設置、入試制度設計の支援など設置者を問わず多様な依頼が日々多く寄せられる。
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