国公立大学の医療系は高い人気、医学部は志願倍率も4倍を維持
国公立大学の学部系統別の動向を見ると、志願者数の前年比が最も伸びたのは薬学系で109%、志願倍率は3.5倍です。医学科も志願者数は前年比100%、志願倍率は昨年と同じ4.1倍です。このほか看護系も志願者数は前年比101%、志願倍率は昨年よりもアップして2.6倍→2.7倍です。医療系はここ数年、高い人気が続いてきましたが、医学科と薬学系だけは人気が落ちていました。それが一転して人気が高まったのは、大学入学共通テスト(以下、共通テスト)の平均点も影響していると思われます。
共通テストの各科目の平均点が、当初の予想に反して高くなったため、結果として理系7科目型の平均点もアップしました。受験生の立場から見れば、予定していた以上の得点が得られたことになりますので、思い切って難関大にチャレンジしとうという気持ちも出てきます。加えて、これまでも大きな災害や国際的な紛争があると、医療系学部を目指す受験生が増える傾向にありました。これは医師などの専門的職業人として、困難に直面する現場で直接貢献したいと考える生徒が増えるためだと考えられています。
世界は今まさに災害とも言える大きな困難に見舞われており、受験生の中には、この状況下で医師として患者を救うことや治療薬の開発などに意欲を持つ者も増えているのではないかと推察されます。
ただ、そうした一部の人気系統を除けば、全体としては人口減少の影響を免れないものと言えます。文部科学省の資料<図1、図2>を見ても公立大学は新設大学や学部増設の影響で志願者数が増えていますが、国立大学は志願者数が減少傾向にあることが分かります。それに伴い志願倍率も下落傾向にあることも見て取れます。なお、図の国立大学の志願倍率には、実質倍率は低くても志願倍率が高い後期日程が含まれていますので、それほど下落していないように見えますが、一般選抜の主となる前期日程は低下傾向です。
これからも公立大学は専門職大学も含め、新設大学や学部増設が続くと見られます。そのため、全体としての志願倍率はある程度維持されると考えられますが、国立大学の志願倍率、さらには実質倍率も低下していく傾向にあると言えるでしょう。