千葉商科大学の「オナーズプログラム」とは?
「オナーズプログラム」と聞いて、耳慣れない方も多いのではないだろうか。一般的には、優秀な学生の能力をさらに向上させる特別プログラムのことを指す。通常のカリキュラムとは別の講義や特別クラスが用意されることも多く、対象、期間、その内容は各大学によってさまざまだ。
千葉商科大学商経学部では、2020年度よりビジネス社会で活躍できる人材育成のため、専門分野の知識・技能の実践を通じて、論理的思考力、課題発見・解決力、実行力、主体性・協調性、プレゼンテーション能力・表現力を養うこと目的に、「オナーズプログラム」を実施している。
さまざまな分野の第一線で活躍する講師を招き、5日間の短期集中型のアクティブラーニングを通じて、課題解決のためのアイデアの発想方法や企業研究の手法、チームビルディング、リアルなビジネスについて学び、協力企業より与えられた課題に対して学生が自ら考えた企画をプレゼンテーションし、最優秀賞・優秀賞のチームを選出、表彰する。
実際に、昨年オナーズプログラムに参加した、現在2年生の桐田 悠人さんと森 天馬さんに話を聞いた。
昨年は、株式会社マイナビ、株式会社電通、株式会社近畿日本ツーリスト首都圏(当時:現近畿日本ツーリスト株式会社)の協力のもと、3月に「観光の力で千葉県内の観光需要の回復・地域経済の活性化を解決する」という課題に取り組んだ。プログラムは、2週間のうちの5日間で行われたため、合間の日にもチームで連絡を取り、オンラインで話し合った。残念ながら、桐田さんと森さんのチームは賞には選ばれなかったが、コロナ禍の中、工夫をしながらプログラムに取り組んだ様子を振り返り、参加して本当によかったと二人は口を揃える。
桐田さんは、受賞を逃したことで、個人的に企画を練り直し、講師に再プレゼンをした。結果、その会社でインターンをすることになり、会社内でさらにその企画をブラッシュアップしようと動き始めた矢先に、コロナ対策による緊急事態宣言で実現ができなくなってしまった。しかし、今年はチューターとしてオナーズプログラムの運営側に携わることで、昨年とは違う視点で学び、次に生かしたいと意欲的だ。将来について尋ねると、まだ業種などは定まってはいないが、在学中にさらに視野を広げ、ポジティブな影響を与えられるものを世の中に創り出していきたいと話した。
同じチームだった森さんは、オナーズプログラムを転換点にしたいとの想いで参加を決めたという。「入学してから、コロナの影響でほとんど学校に登校することができず、友人もできずにいました。オナーズプログラムに参加して、桐田くんをはじめ友人もでき、東京オリンピック・パラリンピックにもボランティアとして参加するなど、一つ自分から行動を起こしたことで、本当にいろいろなことが変わりました」。森さんも、今年度はチューターとして参加し1年前の自分の行動を別の角度から振り返りつつ、目標にしている起業に向けて動き出すと話してくれた。
大学での学びを未来につなげるファーストステップに
千葉商科大学のオナーズプログラムは、対象学年を1年生としている。
担当である商経学部の根岸亮平先生は、「近年、志願者も増加し優秀な学生も多くいます。しかし、税理士や中小企業診断士など明確な目標を持って入学する学生がいる一方で、大学に入って高い意欲を持ちながら、なかなか目標を見つけられないという学生がいるのも、また事実です。そういった学生も、1年生の段階でチャレンジする機会に出会えれば、新たな気づきを得て、自分の方向性を見定めて学びに向かうことができるのではないかと考えています」と話す。
今年度のオナーズプログラムでは、地元大手企業を迎え課題に取り組む。前回の内容に加えて高校生の前でのプレゼンテーションも日程に追加された。昨年参加した学生から、プレゼンテーションの機会が2回あれば、企画がよりブラッシュアップするのではないかという意見があったことと、同時に高校生に向けてこうした大学の取り組みを知ってもらう場を提供するのが狙いだ。なお、取材時には予定されていた高校生に向けてのプレゼンテーションは、残念ながら今年度はコロナウイルス感染症の拡大により、中止となってしまった。来年こそは、学生たちの熱いプレゼンテーションが対面で見られることを願うばかりだ。
また、昨年度は商経学部のみで実施したが、今年度、全5学部へ対象を広げたところ、定員を上回る応募があり、エントリーシートの提出とグループワークによる選考も行われた。今後は、学年を超えて縦への展開も期待される。
大学に入って目標をみつけたい、学びたいという意欲を持ちながら、どのように道筋をたてていけばよいか悩んでいる学生は多い。一方で、ひとつきっかけをつかめれば、学びへの取り組み方も変わり、将来への道筋もきっとみえてくる。現在の千葉商科大学のオナーズプログラムが1年生を対象とし、学びのファーストステップとする意義はそこにある。もちろん、参加して得る学びが重要なのはいうまでもないが、このプログラムに魅力を感じ、応募しようと決めた時点から、その学生は自らの目標をつかむ一歩を踏み出したといえるのではないのだろうか。