麻布大学は、昨年12月2日に「麻布獣医学園記者交流会」を行い、小倉弘明理事長及び川上泰学長による就任挨拶と大学の近況報告、並びにSDGsの活動紹介が行われた。

小倉理事長は、令和3年9月1日に理事長に就任し、任期は令和6年5月31日までとなっている。また、川上泰学長は、令和3年11月1日に学長に就任し、任期は令和7年3月31日までとなっており、麻布大学環境保健学部(現:生命・環境科学部)を卒業した経歴から、麻布大学の長い歴史の中でも獣医学部出身者以外での初の学長就任となる。

記者交流会では、まず、小倉弘明理事長から就任挨拶と今後の抱負が語られ、第4期中期目標・中期計画として「時代を切り拓くフロントランナーの育成」というビジョンの下、「研究成果を社会に還元し、地域社会と連携していくこと」と「学生にとって大切な学びの場であり、また出会いの場でもあるこの大学をしっかりと発展させていきたい」との考えを示した。

 

 

次に、川上泰学長からは、就任挨拶と大学の近況報告が行われ、以下のように、今後取り組むべき課題を挙げた。

1,志願者の確保について
18歳人口の減少によって、各私立大学は厳しい状況にあり、麻布大学でも一部の学科では志願者確保に苦戦を強いられている。
そこで、学内外から委員を招集し、「大学改革室」を設置することで、第三者の客観的な視点を取り入れながら、さまざまな改革に取り組む。
また、生命・環境科学部では、すでに高校6校と教育連携協定を結んでおり、探求型学習への協力を中心に、連携内容を充実させることで、協定校との関係を強化していく。

 

2,大学附属動物病院改革について
二次診療を行っている麻布大学附属動物病院は、教育・研究と診療の両輪で地域の中核を担うべく、病院の増改築・改修工事を速やかに進め、またホームページや同窓会経由等で各種の情報発信、セミナー開催等を行う。

 

3,麻布大学附属高等学校との高大接続について
附属高等学校からの志願者を一定数確保すべく、附属高等学校の教諭との連携をより深め、高校生の進路選択に関する状況を把握した上で、魅力ある学部、学科の在り方を検討し、学園一体となった戦略的な入試・広報活動を行う。

 

4,補助金の獲得について
科学研究費の獲得状況が毎年増加傾向にあり、近年、研究の成果が非常に上がっている。
そこで、「研究の麻布大学」のイメージを定着させるべく環境整備を進め、補助金や助成金の獲得も重要事項として注力していく。

 

5,大学評価等への対応について
令和5年度に予定されている自己点検評価及び獣医学教育評価について、学長自身、これまで認証評価、自己点検・評価に携わってきた経験を活かし、ただ受審をするだけにとどまらず、教育の質保証を常に意識した麻布大学の改革につなげる。

 

6,文部科学省「知識集約型社会を支える人材育成事業」(メニューⅡ 出る杭を引き出す教育プログラム)への取組について
全国で唯一採択された「動物共生科学ジェネラリスト育成プログラム」について、事業推進においては教育改革が必須であり、体制整備とともに着実に進める。
また、効果的な情報発信を行い、志願者確保につなげる。

また、昨年4月に開設した島根県美郷町の「フィールドワークセンター」についても触れ、生命・環境科学部においても、環境と動物についてのフィールドワークを学科教育の中に取り入れていくことを紹介した。

最後に、川上学長は、教学の長として、大学全体の正確な把握と情報共有を積極的に行う考えを示し、同時に、女性教職員の活躍の場を広げ、教職員がやりがいを感じながら働ける雰囲気と能力を最大限に発揮できる環境作りに対して、学長自らが先頭に立って実現し、大学が生き残るべく、改革を進めるとの決意を述べた。

 

 

続いて、SDGsの活動紹介として、生命・環境科学部環境科学科の村山史世准教授から、「地球共生系×SDGs環境科学科を中心に」と題し、環境科学科が取り組んできたSDGsについて説明がされた。

1,環境科学科のSDGs取組について
環境科学科では、国連が2030アジェンダ・SDGsを採択した2015年9月の翌月にはSDGsの研究会が発足し、同年12月には学生有志が3大学対抗プレゼン大会でトヨタのCSR部に対してSDGsに基づいた提案を行い、市民向けイベントでは、~水と衛生について語り合う~「環境カフェあざぶ」を開催するなど、SDGsの認知度が低い早期の段階から積極的に取り組んできた。

その後、JST(科学技術振興機構)のSDGs事例集に掲載された相模原市青根でのあざおね社中の活動をはじめ、神奈川県や相模原市のSDGsパートナーズ登録、SC相模原や町田ゼルビアといったプロサッカーチームと連携するなど、行政や企業とのSDGsは継続して取り組んでおり、朝日新聞主催の大学SDGsアクションアワードでは2019年と2020年に入賞した実績もある。

 

2,教育について
全学共通科目の「地球共生論」、環境科学科科目の「地球環境科学」「SDGsと未来共生科学」という科目でSDGsについて学ぶ環境がある。

また、環境科学科の稲葉一穂教授がSDGsをキーワードとした研究で科研費を獲得したことや他学科でもSDGsに関連する研究を行っているなど、大学全体で多岐にわたりSDGsの教育・研究に取り組んでいる。

 

 

次に、環境科学科の坂西梓里特任助教から、現在のSDGs活動の一例として、アサヒグループホールディングスと連携して取り組んでいるプラスチックゴミ削減プロジェクト「森のタンブラーのプロジェクト」が紹介された。

1,プロジェクトの目的
私たちの身の回りに溢れ、大量に排出される「使い捨て容器」。麻布大学生命・環境科学部環境科学科とアサヒグループホールディングスは「使い続けるを当たり前にしていきたい」という目標を掲げ、パナソニックとアサヒビールが共同開発した植物由来の何度でも使えるエコカップ「森のタンブラー」という「モノ」を使い、学生がアイディア、つまり「コト」を提供して、使い捨て容器の削減と自分たちの消費行動の見直しを図っていくプロジェクトをスタートさせた。

 

2,学内プロジェクトの内容
すでに、SC相模原でのマイタンブラー制導入や町田市でのマイボトルOK店への利用促進などの活動を行っていたものの、コロナ禍により、学内での活動が実行できずにいたが、一時的に状況が緩和したため、学内での活動を再開するに至った。
学生たちは、今回のプロジェクトのために学内で排出される使い捨て容器(ペットボトル)の量を調査し、アンケート回答者にエコカップをプレゼントするマイタンブラーキャンペーンを実施した。

さらに、学内にウォーターサーバーを設置することでマイタンブラー(マイボトル)の利用環境を整え、ウォーターサーバーの給水量からペットボトル量に換算し、削減量を計る。

なお、11月から記者交流会当日(12月2日時点)までは、3,532本分のペットボトルの削減効果があり、この取り組みは2021年度末まで継続予定である。

 

 

3,プロジェクト参加学生の声
・「座学では学ぶことができない社会とのつながりを実感し、また企業がニーズに対して何をやっているのかというのを学ぶことができた。」
・「環境の実態を一般の方に伝えていくことがすごく重要だと感じました。現状を知っていただくことで少しでも削減をつなげていければと思いました。」

これらの発表のあと、参加者との質疑応答、写真撮影、個々の出席者同士での情報交換などが行われ、記者交流会は盛況のうちに終了した。

 

 

麻布大学

動物、食、環境、健康といった私たちの暮らしに密接な学びで、スペシャリストをめざす!

麻布大学のルーツは、明治23年(1890年)、與倉東隆によって東京の麻布(現 港区南麻布)に開設された「東京獣医講習所」にさかのぼります。1950年に麻布獣医科大学として開学、1980年に麻布大学に改称。麻布大学では建学の精神「学理の討究と誠実なる実践」のもと[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。