専門職大学・専門職短期大学では、理論と実践を架橋する教育が謳われており、各専門職大学においても特徴のある教育課程が編成されている。専門職大学の特長、教育課程の4つの科目群については、これまでのコラムで述べられているので、今回は専門職大学・専門職短期大学の大きな特徴のひとつである実習・臨地実務実習について、一般の大学と異なる点を中心に説明する。
そもそもこれらの実習等は、文部科学省の基準では、どのように規定されているだろうか。専門職大学設置基準第29条、30条に示されている卒業要件を要約すると以下のとおりになる。
実験、実習又は実技による授業科目を、4年制で40単位以上、2年制で20単位以上、3年制で30単位以上を修得するものとする。上記の実習等による授業科目には、企業等での「臨地実務実習」を4年制で20単位以上、2年制で10単位以上、3年制で15単位以上を修得するものとする。
以上のような特長を、文科省はホームページで以下のような図を用いて示している。
また、こちらも文部科学省が示している臨地実務実習の手引きからの抜粋になるが、臨地実務実習について以下のように定義している。
「臨地実務実習」は、企業その他の事業所又はこれに類する場所において、当該事業者の実務に従事することにより行う実習による授業科目である。4年制の場合で卒業に必要な124単位中20単位を占める等、専門職大学等の教育課程の中でも核となる授業科目の一つである。
※文部科学省「専門職大学等の臨地実務実習の手引き」より
一部の資格取得を目的とした大学等以外で、学外での長期実習を正規の授業科目として位置付けている大学等は少なく、この点は専門職大学の大きな特長といえる。
正規の授業科目であるため、実習計画については専門職大学等が主体的に計画する。専門職大学等は、実習状況を把握するために、担当教員による巡回指導の実施、定期的な報告の受理等により臨地実務実習施設における実習状況を十分に把握できる体制を整える必要がある。
また、学生の実習指導を行うために、臨地実務実習を行う事業者等に所属する実習指導者を置くことが義務付けられ、実習指導者は実習終了後に実習結果を報告し、その報告を踏まえて専門職大学等は実習の成績評価を行う。
以上のように実習の計画、実施、実習結果の報告、成績評価を経て、改善へ向けた取組を行う。改善へ向けた評価・検討は、実習先事業者や専門職大学関係者などで構成される教育課程連携協議会で行う。教育課程連携協議会については、別のコラムで詳しく説明するが、この協議会で検討された内容を、どのように教育課程に反映させていくかが今後の課題である。
では、各専門職大学・専門職短期大学で計画・実施されている実習・臨地実務実習にはどのようなものがあるか。臨地実務実習では、それぞれの専門職大学・専門職短期大学の分野により企業や病院など、実習先は多岐にわたる。
例えば、令和元年度に開学した3校について、文部科学省に公開されている各校の設置の趣旨を見ていくと、高知リハビリテーション専門職大学の理学療法学専攻では、3年次に「理学療法臨床実習Ⅱ」、4年次に「理学療法臨床実習Ⅲ」が開講され、医療機関等での実習を行う。
国際ファッション専門職大学では、3年次に「臨地実習Ⅰ(企業)」を開講し、ファッションの製造業における実習を中心に行い、ヤマザキ動物看護専門職短期大学では、1,2年次に加え3年次に学外の動物病院又は動物関連施設(企業・店舗等)で7日間ずつ、3か所で臨地実務実習を行うと記載されている。
その他の具体的な内容については各専門職大学のホームページを参照いただきたいのだが、いずれも学外で長期の実習を行い、その分野の最新の技術、情報などに触れ、修得することを目的としている。
今後、新たな専門職大学が増えてくる中で、新たな分野の登場も見込まれるが、それぞれの特徴に合わせた臨地実務実習を行い、専門職大学の目的である高度な実践力を有する学生の育成を目指していく。