去る2月24日の、ロシアによるウクライナ侵攻から約2か月余り。事態が混迷を深める中、国外に逃れたウクライナ難民は、3月末時点で400万人を越えました。世界各国で避難民の受け入れが進んでいますが、日本でも、教育・研究の継続を希望する学生や研究者の受け入れを表明する大学が相次いでいます。
いち早く「ウクライナ人大学生の受け入れ」を表明したICU
ロシアの軍事侵攻開始後、いち早くウクライナ人大学生の受け入れを表明したのが国際基督教大学(ICU)。日本国際基督教大学財団(JICUF。在ニューヨーク)と共同して、ロシアの軍事侵攻を逃れるために日本へ入国し、教育の継続を希望するウクライナの大学生の受け入れを行うと公表しました。
ICUとJICUFは、2017年よりシリア内戦を逃れたシリア学生を支援してきましたが、同じ人道的精神に基づいて、ウクライナ人学生を受け入れる意志を表明したものです。ICUでの学びを希望する学生の特定や、ICUが提供できる具体的な支援については、公的機関および民間の関連諸機関と相談のうえ行われています。また、国立大学協会や日本私立大学連盟は、平和的解決が早く行われるよう声明を出しました。
自治体との連携も
その後、国内の大学や日本語学校が相次いでウクライナ学生の受け入れを表明しています。3月18日には、長崎大学がウクライナの学生を受け入れ、学びの場を提供すると発表しました。大学院生30人、学部生10人のあわせて40人を受け入れる方向で、「日本の文化、長崎平和学などを英語で学ぶ講義に参加できるようにする」としています。
住居として大学が持つ宿舎を提供するほか、生活費も支援するとのこと。新潟県三条市の三条市立大学(アハメド・シャハリアル学長)もウクライナ学生の受け入れを発表。県内自治体でもウクライナから体に避難した学生の学びを止めないために社会的役割を果たそうと受け入れを決めたとしています。
避難大学生の専攻分野に関する三条市立大学1、2年次開講科目の受講を許可するもので、避難大学生の専攻分野や基礎知識などを確認して受講の可否を決め、受講できる場合は科目等履修生、あるいは聴講生として受け入れる方針のようです。避難大学生への経済支援、住居支援、生活支援などは、避難受け入れ自治体の負担を基本とし、詳細は自治体と協議して対応するとのこと。
学生だけでなく研究者にも救いの手を
東京大学も、研究や学ぶ場を確保できなくなった研究者、学生を受け入れる制度を設
けました。国籍は問わず、最大数十人程度を想定。研究者の受け入れ表明は国内では初めてで、渡航や住居、生活面での援助も行うとのことです。
難民問題は受け入れ後の支援も課題となってきます。経済支援、住居支援、生活支援に加えて、精神面でのサポートも必要で地域社会や行政との連携が不可欠であることは言うまでもありません。学生・研究者だけでなく、女性や子どもの避難民が増えたとき、あるいは今回の事態に限らず、祖国を追われ難民となった人たちにどのような支援の手を差し伸べるか、この機会に今一度よく考えてみたいものです。
ウクライナ危機に対する大学の取り組み
〇留学生受け入れ
・長崎大 https://www.nagasaki-u.ac.jp/ja/guidance/kouhou/press/file/2021/20220318.pdf
・ICU https://www.icu.ac.jp/news/2203081600.html
〇募金活動
・神戸大学 https://www.kobe-u.ac.jp/NEWS/info/2022_03_23_02.html
・上智大学 https://www.sophia.ac.jp/jpn/news/PR/220317ukraine_unhcr.html
・龍谷大学 https://www.ryukoku.ac.jp/donation/
・清泉女子大 https://www.seisen-u.ac.jp/news/nid00001216.html
・東北大 https://www.ukrainesupport.shuyukai-tohoku-u.net/