ウェルビーイング(well-being)への関心が世界的に高まるなか、人々の心身の健康や社会的幸福の実現に向けてスポーツが果たす役割が大きく注目されている。こうした状況を背景として、2023年4月、立教大学ではスポーツウエルネス学部が新座キャンパスに新設された。ここでは、新学部のめざすところや学びの特長、育成する人材像などについて紹介していく。

 


「ウエルネス=よりよく生きる」ための知見・実践力を習得

立教大学スポーツウエルネス学部は、既存のコミュニティ福祉学部を改組することで誕生した、同大では11番目の学部である。新学部のコンセプトについて、沼澤秀雄学部長は次のように解説する。

「『すべての人の生きる歓びのために』を理念とし、スポーツを通して『ウェルビーイング』、 つまり人々がより良く生きることを追究するのを目的とする学部です。教育におけるポイントは、”スポーツリベラルアーツ”ともいうべき多様性です。スポーツを軸に人間性を養い、人の心身にかかわる科学を学びながら、国際性やデータサイエンスなどについても幅広く学ぶことで、社会のさまざまな場面で活躍するジェネラリストを育てていきます」

また、スポーツウエルネス学部が新座キャンパスに新設されることにも大きな意義があると、沼澤学部長は語る。

「スポーツに『人間性の回復(レ・クリエーション)』を見いだすことは、ある意味で立教大学の建学の精神『キリスト教に基づく人間教育』に通じるものがあります。学び舎で学問を学び、チャペルで祈りを捧げ、運動場でスポーツに取り組む。これらを通じた三位一体の教育により、豊かな人間性を育むことが私たちのめざすところですが、それは広大な敷地に恵まれた新座キャンパスだからこそできることだと考えています」

3つの学びの領域を展開して多様な人材を育成する

では、新学部では具体的にどのようなことが学べるのだろうか。

「運動やスポーツ、レクリエーション、環境、教育、心理などについて、多角的に学んでいきます。本学が他大学のスポーツ系学部と異なるのは、こうした学際的な研究領域を配置している点といえます」

その学びの領域については「アスリートパフォーマンス領域」「ウエルネススポーツ領域」「環境・スポーツ教育領域」の大きく3つに分かれている。なかでも特長的なのが、“スポーツリベラルアーツ”を象徴する共通科目が置かれている点だ。

「アスリートが競技を通して養うマインドやリーダーシップは、社会の幅広い分野に応用できることから、その中心には『スポーツマンシップ論』と『スポーツリーダーシップ論』の2科目を設置し、これらをしっかり学んでもらいます。そのうえで、ウエルネスに関しても生命科学や心理学など多様な観点から学んでいきます」

データサイエンスに関する科目が充実している点でも、新学部は注目されている。

「コロナ禍で多くの人が改めて実感することになりましたが、今の時代はあらゆる分野でデータに基づいた実証的な議論が求められます。スポーツやウエルネスについて考える際にもデータサイエンスに関する知見や技術は必須と考え、共通科目に組み込みました」

ほかにも、グローバルに活躍するための英語運用能力を磨く専門英語科目群では、アスリート出身の外国人教員が指導にあたるなど、同学部ならではの特色ある英語教育が展開される予定だ。さらに、大学教育では異例のeスポーツにも目を向けているのも特長だと、沼澤学部長は語る。

「eスポーツは社会的な注目度が高まっている一方で、科学的な研究はまだまだ進んでいません。本学部ではここに取り組んでいきたい。たとえば、ゲームによる神経系の活動が脳の活性化にどう関係するのか、eスポーツを通して養われる集中力が実社会での仕事力にどうつながっていくか、やりすぎることで心身にどのような悪影響があるのかなど、eスポーツの功罪両面を科学的にあきらかにしていきたいです。また、しょうがいのある人と健常者と対等に楽しめるeスポーツというプラットフォームを、インクルーシブなコミュニケーションやコミュニティ、まちづくりにどう活かしていくかということも研究対象としていく予定です」

スポーツや教育の現場など、グローバルに活躍できる人材の輩出をめざす

卒業後の進路については、コミュニティ福祉学部スポーツウエルネス学科を卒業した先輩たちの進路が参考になる。

「プロスポーツ選手や指導者、トレーナーといったスペシャリスト、スポーツウエルネスの知識を活かしたスポーツマネジメント系企業や国際スポーツ機関、他業種(シンクタンク、金融)のアナリストといったジェネラリスト、さらには一般企業やマスメディア、中学・高校の保健体育教員など実にさまざまな分野で卒業生が活躍しています」と沼澤学部長。

進路選択に役立つ講義やプログラムなどカリキュラムも、新学部では充実している。一般企業やスポーツ施設でのインターンシップ・現場実習のほか、「専門性に立つグローバル教養人」をめざし、国際交流や異文化を体験する異文化スタディや海外プログラムを開講することが予定されている。取得可能な資格についても、中学校・高等学校(一種)教員免許状(保健体育)、健康運動指導士(受験資格)、初級・中級パラスポーツ指導員、トレーナー関連資格など、スポーツや教育の現場につながるものが多数用意されているそうだ。

以上のように、スポーツウエルネス学部が取り組む多様で先進的な教育は、これからの社会におけるスポーツの可能性を示している。スポーツウエルネスという言葉自体は、まだ耳慣れない、新しい領域ではあるが、「すべての人の生きる歓びのために」今後に向けた飛躍が、大きく期待されている。

立教大学

"RIKKYO Learning Style”で「新しい」グローバルリーダー力を習得

立教大学は、1874 年の創立以来、国際性やリーダーシップを育むリベラルアーツ教育を実践。現在は、11学部27学科10専修1コースを設置しています。心の豊かさとリーダーシップをあわせもち、グローバルな課題と社会的要請に対応し、広い視野に立って課題を発見・解決で[…]

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