10月23日、茨城県の量子科学技術研究開発機構(QST)那珂研究所にある世界最大のトカマク型超伝導核融合実験装置「JT-60SA」において、初めてプラズマを生成した。 初プラズマの生成は、複雑な各システムがうまく連携し、装置として運転できたことを意味し、核融合炉にとって大きなマイルストーンを達成したことになるという。

 

原型炉開発に繋がる成果を創出し、将来を担う人材を育成へ

 「JT-60SA」は、フュージョン(核融合)エネルギーの実用化を目指すITER(イーター)計画を支援・補完するために、日欧が協力して建設した実験装置だ。2021年3月にクライオスタット内での超伝導コイル本体と電路をつなぐコイル接続部の絶縁損傷が発生し統合試験運転を中断していたが、大幅な改修を実施し、2023年5月より統合試験運転を再開。真空排気、超伝導コイルの冷却、通電試験等を経て、日本時間の2023年10月23日17:30頃、初めてプラズマを生成した。

 物質には固体、液体、気体の三態があり、プラズマとは気体に熱や電気エネルギーを加え、プラスイオン、マイナスイオンが混在した非常に活性化した第四の状態を指す。核融合反応によるエネルギー生成の実現を目指すためには1億度以上の超高温プラズマを保持する必要があり、「JT-60SA」は、約-269℃(絶対温度約4K)に冷却された強力な超伝導コイルを使用し、磁場によりプラズマを閉じ込める「トカマク型」の装置となっている。

 フュージョン(核融合)に必要な燃料は海水から採取することができ、発電の過程で二酸化炭素等を排出することがないといったメリットがあり、エネルギー問題と環境問題を根本的に解決しうる次世代エネルギーと期待されている。「JT-60SA」では、今後プラズマの性能向上のための実験を進めていくという。

 文部科学省は、この装置を活用し、原型炉開発に繋がる成果をいち早く創出するとともに、将来を担う人材を育成していく予定だ。また、自然科学研究機構 核融合科学研究所では全国の大学・大学院に情報提供を呼びかけ、プラズマ・核融合科学の勉強や研究ができる大学、大学院を探すポータルサイトを作成し公開している。掲載データは2020年3月5日現在の情報だが、教育内容から講義数、教員・学生数などリンク付きで紹介しており、プラズマ・核融合に関心を持った高校生や大学生に役立つ内容となっている。

●文部科学省:太陽のエネルギーと同じフュージョン(核融合)エネルギーの実現に向けた大きな一歩 「JT-60SAの初プラズマ生成に成功」
https://www.mext.go.jp/b_menu/activity/detail/2023/20231023.html

●核融合エネルギーとは
https://www.mext.go.jp/a_menu/shinkou/fusion/

●プラズマ・核融合を学べる大学・研究室
https://www.nifs.ac.jp/edu/study/index.html

大学ジャーナルオンライン編集部

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