芝浦工業大学工学部機械機能工学科・細矢直基教授、機械工学専攻若田祥氏、量子科学技術研究開発機構量子ビーム科学部門関西光科学研究所・長谷川登主幹研究員、錦野将元研究統括らの研究チームは、コンクリート構造物の欠陥をレーザー誘起プラズマから発生する衝撃波で検出する、世界初の完全非破壊な遠隔打音検査手法を開発した。

 コンクリート建造物の健全性診断は専門の技術者による目視・打音検査で行っているが、構造物が大きくなるほど検査に時間がかかり、また、その検査の効果は検査員の技量に左右されるため、今後増え続けるインフラの老朽化に対処するには、検査の効率化と信頼性が課題となっている。

 この課題を解決するため、芝浦工業大学らの研究チームはレーザー誘起プラズマから発生する衝撃波を用いて欠陥を特定する新たな方法を開発した。この手法では、コンクリート構造物の表面近くにレーザー誘起プラズマでレイリー波を発生させ、欠陥部分を特定できる。建造物に直接衝撃を与えず、打音検査より計測点数が少ないことで、非破壊・遠隔で素早くコンクリート欠陥を検出する。

 研究チームは、新しい手法を評価するため、人工的に欠陥を形成したコンクリートブロック表面近くに高出力レーザーで衝撃波を発生させ、欠陥部分の内側と外側のコンクリート表面の複数の点で振動を分析。解析の結果、欠陥のある部位には振幅が大きなレイリー波が発生していることがわかった。これは、他の衝撃波よりも速い速度で動く表面波で、このレイリー波が観測された箇所を検出することで、内部に埋没されたものも含めて、欠陥箇所を特定することに成功した。

 レイリー波を可視化することで、振動を解析する他の遠隔測定手法に比べて構造物の欠陥をより早く検出し、固有振動モードの測定に比べて測定点数が少なく済む。LIP衝撃波を用いたコンクリート構造物のひび割れの評価は、安全かつ迅速な方法であり、インフラの維持や構造物の破壊防止に活用できる。今後は、本方式の社会実装を目指した改良・開発を進めていく。

※レイリー波は、固体の表面を伝わる表面弾性波の一種で、伝播方向に対して平行な方向に振動する。表面近くに空洞や境目があるとその一部が反射する性質を持ち、水面に立つさざ波のように打撃点を中心として均等に広がるため、これを利用することで広い範囲の検査が可能となる。

論文情報:【International Journal of Mechanical Sciences】Defect detection of concrete in infrastructure based on Rayleigh wave propagation generated by laser-induced plasma shock waves

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