2023年11月3日。江戸川大学の体育館では、集まった多くの観客前に強く伸びやかな歌声が響き渡った。
2010年より江戸川大学の学園祭で開催されている音楽とファッションの融合を発信するイベント『EDOGAWA GIRLS AWARD』。イベントの中心であり次世代の高校生アーティストを発掘する『NEXTAGE ARTIST AUDITION』で、昨年グランプリを受賞した所沢高校のバンド『エレクトロキャパシティ』のデビューミニライブが行われた。ボーカル、ツインキーボード、ドラムという特徴的なバンド構成で、ロックと電子音楽を融合させたみずみずしく軽快なサウンドを放つ。プロデューサーに数々のヒット曲を手掛ける割田康彦氏をむかえ、11月17日に配信リリースのデビューシングル曲『ミッドナイト・フォール』を含む、3曲を披露した。

 

『エレクトロキャパシティ』のライブ

学生が高校生アーティストのデビューをプロデュース

 『EDOGAWA GIRLS AWARD』は、社会学部経営社会学科音楽・ファッションビジネスコースの学生がその企画・運営を行っている。特に『NEXTAGE ARTIST AUDITION』では、音楽ビジネスコースの演習・実習として応募者の中からグランプリに決まったバンドを、学生が自分たちの手でプロデュースしていくという2年次~3年次にかけての一大プロジェクトだ。このプロジェクトを通して、学生は音楽ビジネスを体感する。

 イベント自体は、3年生を主体として運営される。2年生にとっては、3年生について企画・運営を実践で学ぶことができ、次年度に自らが主体となって進めていくための準備期間にもなる。2年間をかけて実施されるこのプロジェクトで、まず最初に決めなければいけないのが高校生アーティストの『応募条件』だ。自分たちが企画・運営するイベントについて話し合う最初の大切な機会でもある。

 現在、3年生でプロデューサーを務めた音楽ビジネスコースの高橋藍璃さん。
「たくさんの高校生に応募してもらうために、昨年からメインボーカル以外のバンドメンバーには男子もOKという応募条件を加えました」と、これまでの女子限定だった応募条件を変更し、今後の可能性に一歩踏み込んだ。

 応募条件が決まると、告知のためのポスター制作が始まる。しかし、これにはとても時間がかかったと話すのは、編集制作を担当し、2年次にはゼミ長としてメンバーをまとめてきた同じく3年生の今泉喬喜さん。

 「まずは、参加者募集のポスターができないと何もはじまりません。友人にモデルをお願いしたり写真を撮ってもらったり、デザイン制作も初めてで手探りの状態でした。正解があるわけではないので、アイデアがたくさん出た分、意見もぶつかって結局2ヶ月ぐらいかかってしまいました。アーティスト写真やMVの撮影も、30人の意見をまとめていくのは大変で、企画やデザインなども複数案作ってみんなの考えを一つに集約していきました」と、当時を振り返った。

 運営は、マネジメントの連絡を取るグループや動画撮影・編集するアートワークチーム、音楽をメインに意見を出す楽曲チームなど、グループ分けをして、そのグループのリーダーを中心にそれぞれに意見をまとめながら全体を進めた。

 学生は、音楽プロデューサー、レコード会社をはじめ、各分野のプロの力を借りながら、アーティストをデビューさせるプロセスに携わっていく。今回は、株式会社ポニーキャニオンの協力を得て、エレクトロキャパシティの広報活動や楽曲のプロモーションもSNS中心に産学協同で行うことになった。

『EDOGAWA GIRLS AWARD』が学生にもたらすもの

 「才能があるのに世の中に知られていないアーティストがたくさんいます。そういう方を、さまざまな方法でマネジメントしていけるようになりたいと思って、いろいろな大学を探す中で江戸川大学の音楽ビジネスコースを選びました。『EDOGAWA GIRLS AWARD』でプロデュースしたエレクトロキャパシティのデビューパフォーマンスをみて、彼らの成長を目の当たりにできたことがとても嬉しかったです。僕自身も、はじめは何もできませんでしたが、この1年で動画編集やデザイン制作など、アーティストのマネジメントやプロデュースにおいて必要なさまざまなスキルを磨くことができたと思います(今泉さん)」

 「私は、いずれ海外で働きたいと思っています。そういう意味でも、音楽は世界共通だから学べることも活かせることも多いと思って音楽ビジネスコースに入りました。『EDOGAWA GIRLS AWARD』には、音楽業界をはじめ、さまざまな企業やプロの方などが関わってくださっているので、まずは、挨拶。それから名前を覚えてもらったり、言われるより先に質問したり、学ぶ姿勢があることを周囲の人たちに分かってもらえるような行動を心がけました。このプロジェクトを通して一番感じたのは、みんなで力を合わせることの凄さです。だから、自分もどんな環境でもアジャストできる人になりたい。今回、私はプロデューサーという役割でしたが、だからといってプロデューサーが全部を管理するわけではなくて、音響チームや編集チームなど、状況に応じてそれぞれがイニシアチブを発揮しながら、役割を果たしていくことが大切だと思いました。また、何かにチャレンジしたとき、見守りながらも間違っていれば「それは違うかもしれない」と教えてくれる先生方もいます。失敗も財産なので、違った見方も学習できるこの環境はとても貴重で、やりたいことはどんどん発信するべきだとも思いました(高橋さん)」

 音楽業界の第一線で、宣伝やマーケティング、日本人アーティストの海外進出を手掛けてきた関根直樹教授は、『EDOGAWA GIRLS AWARD』を通しての学生の変化に驚いたと話す。

 「最初に、彼らがゼミに入ってきたときは、大丈夫かな?本当にできるんだろうか?と正直不安に思うこともありましたが、この1、2年で何が彼らをこんなに変えたんだと思うほどに成長する姿を見せてくれました。そのことが私自身もとても嬉しいです」

左から高橋藍璃さん、関根直樹教授、今泉喬喜さん

 

 このプロジェクトで培われる「クリエイティブ力」「プロデュース力」といった知識やスキルは、今やどのビジネスにおいても求められている。音楽ビジネスコースの「高校生アーティストのプロデュース」という実践で得た経験や身につけた力は、音楽業界のみならず様々なビジネスにおいても応用できるものだということに、学生は社会に出て実感するに違いない。

イベントを成功させた経営社会学科音楽・ファッションビジネスコースの学生たち

江戸川大学

普遍的な教養と、時代が求める専門性を身につけ、将来は幅広い分野で活躍

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大学ジャーナルオンライン編集部

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