「個性の尊重」「品性の陶冶」「勤労の実践」を建学の精神に掲げている成蹊大学は、創立以来、一貫して少人数教育を行い、社会を先導する人材の輩出に尽力してきた。キャリア支援センターでもその伝統を受け継ぎ、学生一人ひとりの悩みに応じ、オーダーメイドのキャリア支援を実施している。学生と職員の距離が近く、温かみに満ちたキャリア支援には定評があり、学生の要望にも迅速に応え、チャットボットの運用やビズリーチ・キャンパスの導入を進めてきた。成蹊大学が目指す「キャリア支援のあり方」について、キャリア支援センターの本郷有充事務長と落合伸之主査にお話を伺った。

学生一人ひとりと丁寧に向き合う「オーダーメイドのキャリア支援」を実践

 1912年創立の成蹊実務学校を源流とする成蹊大学は、「学生一人ひとりの個性を尊重し、自ら進んで学ぶ人間を育てる」との考えから、一貫して少人数教育を展開してきた。キャリア支援においてもその考えを踏襲しており、「社会に貢献できる人材の輩出」という大学の使命を全うするため、学生一人ひとりと向き合いながら、きめ細かな支援を行っている。

 「本学は5学部10学科4研究科を擁する総合大学で、約7,700人の学生が東京・吉祥寺のワンキャンパスで学びます。学生と教職員の距離が近く、キャリア支援センターでは、このような成蹊大学ならではの環境・風土を生かした支援を行っています」と、キャリア支援センターの本郷有充事務長は話してくれた。主に「個別相談」「キャリア支援プログラム」「多様な情報提供」の3つのサポートを実施しており、特に「個別相談」に力を入れている。

「1学年約1,800名の学生に対して、専任・非専任合わせて16名の職員が対応。目標設定からESの書き方、面接指導など、一人ひとりに合わせた『オーダーメイドのサポート』を行っています」(本郷事務長)

 「金融やゼネコン、メーカー、印刷、ホテルなど、キャリア支援センターの職員は多彩なバックグラウンドをもっており、豊富な社会経験を生かした支援ができるのもまた、本学のキャリア支援センターの特徴です」と、落合伸之主査。個別相談の利用回数は年々増加しており、2023年度に実施した「卒業生満足度調査」でも高い評価を得ている。
キャリア支援センターの本郷有充事務長は保険業界出身。「多様なバックグラウンドを持つ職員の経験も生かして、学生のキャリアに関する相談に応じています」

学生の要望に迅速に応え、2023年秋にビズリーチ・キャンパスを導入

 キャリア支援センターではこれまで、学生とのやりとりをメールベースで行ってきた。しかし就職活動中の学生の場合、1日に大量のメールが届くため、キャリア支援センターからのメールが埋もれ、見逃してしまうリスクがある。この課題を解決するため、2022年度からスマートフォンを活用したコミュニケーションを開始した。

 「最初に始めたのが、LINEの導入です。チャットメインで、情報発信や学生の問い合わせ対応に利用していました。すると、私たちが思っていた以上に学生の評判が良く、瞬く間に登録者数が増加。対応が難しくなったため、チャットボットを導入してはどうかという案が出ました」と、落合主査。

 学生からよくもらう質問を整理し、どのような「問」と「返答」を盛り込むべきか、職員全員で検討。何十通りと質問案を出しては絞り込むなど、試行錯誤しながら手作りのチャットボットを作り上げた。「2024年度から運用を始めたところ非常に好評で、今では2,200名の学生が利用しています」(落合主査)

 学生にとって、24時間好きなときに利用できるのが、チャットボットの良いところだ。しかし、「最終面接前のアドバイスがほしい」など、チャットボットでは難しい相談もある。「個別相談の予約をするまでではないが、意見を聞きたい。相談に乗ってほしい」といったニーズに対応するため、AI(ボット)に頼るだけではなく、今も職員が直接チャットで対応するための機能も活用し、職員が学生の相談に個別対応しているという。

 また、学生と教職員の距離が近い成蹊大学では、「学生のニーズに迅速に対応できる」という強みがある。「ビズリーチ・キャンパスの導入」は、まさに学生の要望がきっかけで実現した取り組みだ。

 「ビズリーチ・キャンパスを使ってOB訪問がしたいという学生の要望を受けて、早速問い合わせてみたところ、学生と卒業生がビズリーチ・キャンパスのシステムを介して直接やりとりを行い、OBOG訪問ができることがわかりました。以前からOBOG訪問を重視していたこともあり、すぐに学内で検討を進めました」と、本郷事務長。

 成蹊大学の卒業生は各業界の第一線で活躍しており、「OBOG訪問したい」という学生のニーズに対しても、一つひとつ応えてきた。しかし、メールアドレス変更などにより連絡が取れないケースが増え、近年は、「情報の鮮度が低いため、OBOG訪問に対するニーズに応えられていない」という課題があったという。ビズリーチ・キャンパスは、このような成蹊大学の課題を解決するシステムであると、キャリア支援センターは判断した。

「2023年4月にビズリーチ・キャンパス導入の検討を始め、その半年後にあたる9月に本格稼働しました。24時間の有人監視など安全対策にも力を入れており、学生が安心して利用できる点が、導入を決めた一番のポイントです」(本郷事務長)

 卒業生に登録を促すため、落合主査が卒業生に一斉にメールを送信。同時期に「同窓会誌」にも掲載したところ、わずか一週間で300人の登録があった。「現在、卒業生の登録者数は730名。学生の登録者数は900名近くになっています」(落合主査)

 本郷事務長と落合主査は、予想外のメリットとして、「ビズリーチ・キャンパスの導入により、連絡が困難だった30~40代のマネージャー層とも繋がりが復活した点」を高く評価した。幅広い層の卒業生がビズリーチ・キャンパスに登録してくれたことで、学生の選択肢が広がったからだ。

「対面で実施する個別相談を引き続き重視しながらも、それ以外の支援をスマートフォンで完結できる。ビズリーチ・キャンパスの導入により、理想的な支援体制ができあがったのです」(本郷事務長)
落合伸之主査は、成蹊大学ラグビー部出身。6万人の卒業生とメールでやりとりするなど、ビズリーチ・キャンパスの登録推進に一役買った人物だ。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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