「私たちが最終的にめざしているのは、どんな種類のデータも使いこなし、分野を横断してデータ活用の提案が行えるデータ活用のプロフェッショナルの育成です」と話すのは、この4月に新たに滋賀大学データサイエンス学部長に就任した市川治教授だ。
日本初のデータサイエンス学部を開設し、8年目を迎えた滋賀大学は、データサイエンス教育・研究のパイオニアとして、定評のある文理融合のカリキュラム、企業・自治体との連携を基にしたPBL(Project Based Learning=課題解決型学習)などの学びを展開する。卒業研究の2年間は、リアルな課題解決や研究型の課題に挑戦する。在学時からこうした様々な経験を積み大きく成長した学生は、即戦力として多彩な企業や研究機関から引く手あまたと、その成果は卒業後の進路に表れている。
進路としては、専門職としてのデータサイエンティスト、データを駆使するタイプの総合職などに進む学生が多くいる。業種的にはIT系や金融関係、コンサルティングファームや自治体など、多くの業種から引き合いがあり、卒業生の仕事ぶりは企業からの評価も高い。また、卒業生の中にはデータ分析やインターネット集客、DX支援を行うベンチャー企業を起業した学生もいる。その他、毎年15〜20人が大学院に進学する。
より高次元な潜在表現を扱う
データサイエンスは第2章へ
市川学部長は「データサイエンスの領域では、すでに第2章が始まっています。コンピュータやAIの進化により機械学習で100次元から1000次元レベルの高次元に圧縮されたデータ(潜在表現)が扱えるようになり、データサイエンスの可能性はさらに広がりを見せています」と言う。
昨今、話題になっている画像や文章など新しいコンテンツを要望に合わせて作成できるStable DiffusionやChat GPTなどの生成AIをイメージすればわかりやすいかもしれない。
データサイエンスの柱となる情報学や統計学では、従来、数値データやテキスト(文字情報)データ、音声データ、画像データを独立に分析を行っていた。例えば「林檎」というテキストデータは「赤い」とは結び付かず、その画像データや音声データも無関係として扱われてきた。しかし、生成AI同様、テキストや画像、音声、動画など複数の異なるデータを組み合わせるマルチモーダルな機械学習が容易にできるようになり、そこから新たな価値を見いだし、創造できるデータ解析の人材が求められる時代になった。
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