総合型選抜、学校推薦型選抜を目指す受験生にとって、志望理由書や面接対策は必須ですが、最近は医学部以外でも一般選抜で面接を課す大学も見られます。特に国公立大学では後期日程以外でも面接を課す大学もあり、医療や教育など職業人養成系の学部ではあらかじめ準備しておかなくては答えられないような質問も見られます。大学入学共通テストの自己採点後に準備していたのでは間に合わないかも知れません。
模擬面接など面接対策にはサポートが必要
総合型選抜の出願が9月から始まりますので、すでに出願書類の準備を進めている受験生もいることでしょう。志望理由書などの出願書類はもちろん重要ですが、面接対策も準備しておく必要があります。面接では志望理由書の内容をもとに質問されることが多いので、質問されることを前提に志望理由書を作成すると面接の準備も兼ねることになるので効率的です。
面接で聞かれる一般的な質問やその対策については、多くの情報が入試情報サイトなどで入手できますので、今から情報を集めておくと入試直前期に余裕が持てます。特に河合塾の大学入試情報サイトKei-netの「面接対策」と駿台予備学校 駿台コラム「大学入試の面接では何を聞かれる?よくある質問と対策」は必要な情報がコンパクトにまとまっていますのでお勧めです。
面接対策が受験生にとって厄介なのは、模擬面接が自分一人ではできないことです。生成AIを相手にして準備ができなくもないですが、高校の先生や塾の先生など誰かのサポートを受ける方がはるかに効果的です。面接の準備方法は色々あると思いますが、志望理由などはできれば原稿にしない方が良いと思います。受験生によりますが、原稿にしてしまうとつい暗記したくなるからです。面接担当者が最も困るのは、志望理由を質問した時、暗記してきた内容を思い出そうと必死になって、宙を見ながら答え始める受験生です。コミュニケーションをしたくて質問するのですが、答えが一方通行では内容が良くてもあまり響きません。
また、気をつけたいのは、既存の学部学科を改組して新学部や新学科を設置するケースです。改組前の情報をどんなに読み込んでも、的を外していることになります。近年、伝統校でも改組による学部学科の新増設が相次いでいますので、ここは気をつけたいところです。
【河合塾】大学入試情報サイトKei-net「面接対策」
https://www.keinet.ne.jp/learning/interview/
【駿台予備校】駿台コラム「大学入試の面接では何を聞かれる?よくある質問と対策」
https://www2.sundai.ac.jp/column/juken/college-interview-questions/
難関国立大は研究者としての素養を見ている
ここ数年、難関国立大学で総合型選抜、学校推薦型選抜が拡大しています。一般選抜の2次試験のような学科試験が課される訳ではありませんが、決して楽な選抜方法ではありません。よくコンテスト系で良い成績が収められた場合、総合型選抜、学校推薦型選抜で有利になると考えている受験生がいますが、こと難関国立大学に関してはそうとは言えません。
例えば、ある研究大学の学生募集要項には、「志願者の主体的で継続的な取り組み(最近2年間,又はそれ以上の長期にわたるもの)から問題解決能力を評価します」と書いてあるのですが、「志願者の主体的な取り組み」とは、研究指定高校が学校の授業として生徒に取り組ませている探究活動などは、授業として行っていることなので主体的な取り組みではないと暗に書いてあるのです。しかも「最近2年間」という指定ですので2年以上、取り組んでいないといけません。何かのコンテストなどで1回受賞したことなどは評価の対象としてはかなり弱いものと言えます。この辺りが大学と高校生の意識のギャップが大きいところではないでしょうか。
では実績ではなく、何を見ているかというと難関国立大学は研究者養成が大きな役割ですので、研究者としての素養があるかどうかを見ています。難関国立大学への出願に相応しい実績がないと出願できないのではないかという話を聞くことがありますが、名だたる研究大学の研究者から見れば、高校生が実績だと思っているような実績は、それほどでもないと思われていると考えた方が良いでしょう。そして、特定の分野や領域への関心と生徒が自分なりの研究で得た一定の知識も求められます。
ただし、知識と言っても、研究大学の研究者と議論できるようなレベルが求められている訳ではありません。議論ができるぐらいの知識があれば良いのですが、基本的には的確に質問ができるぐらいの力があれば十分です。的確に質問ができるということは、自分なりに調べて一定の考えを持っているということになります。この辺りの話は、下記の河合塾の進学情報誌「Guideline7・8月号」の特集記事が参考になると思います。
【河合塾】大学入試情報サイトKei-net 進学情報誌Guideline
https://www.keinet.ne.jp/teacher/media/guideline/
大人でも答えに窮するような質問も
面接では志望理由や入学後のことなど一般的な質問が多いのですが、学部の専門性への適性が問われるような質問もあります。前述の河合塾Kei-net「面接対策」には2021年度~2024年度までの4年間分の一般選抜での面接実施状況が掲載されていて、受験生から寄せられた内容とは言え、とても参考になります。、
例えば、埼玉大(教育-小学-家庭科)後期は「子どもにとってのおもちゃはどのようなこと(仕掛けや機能)が大切になるか、そのおもちゃの対象年齢はどのくらいか」や「東京学芸大学(教育-中等-情報)前期の「現在の学校にはたくさんの生徒の学習データがあるが、あなたは何のデータを見てどのような指導を行っていきたいか」などは学部学科の特性がよく見える質問です。
中には、名古屋工業大(工-創造-材料・エネルギー)前期のように「社会では答えの存在しない問題が多くある。あなたはそのような問題に対してどのように取り組んで、どのようなことが大切だと思うか」など大人でも簡単に答えられない質問もあり、受験生はどう答えたのか知りたいところです(ただし、面接への配点は無し)。
また、九州大(歯-歯)前期の「日本の大学の入試難易度は世界でも高いほうであるが、世界大学ランキングにおいては日本の大学のランクは低い」ことの理由を問う質問もあります。普通の高校生が答えられるとは考えづらいですが、ちなみに面接への配点は無いため、受験生はそれほどプレッシャーを感じなかっただろうと想像できます。
このほか鳴門教育大(学校教育-小中-理科)後期では「妖怪についていると思うか、どういう時に妖怪はいると感じるのか」、「UFOはいると思うか、UFOとはどういうものか、UFOがいると思う根拠、UFOの観測の仕方」など一見すると何の話かと思うような質問もありますが、よくよく考えてみれば、小学生が先生に質問してきそうなことですので面接の意図が理解できます。ただ、ある国立大学の「次に私が質問する内容を当ててみてください」は高校生にはいささか難易度が高いでしょう。