④ トヨタ女性技術者育成育成基金

■2025年4月時点で大学1・3年生または大学院1年生
 2025年4月から応募開始予定
■奨学支援内容
 ①実質無利息で年間60万円が借入可能(卒業後8年で返済)
 ②入学から卒業まで最長6年間サポート
 ③元金全額または半額返済免除制度(条件あり)
  基金支援12社に入社した場合には実質元金の返済は全額免除(元利金返済額と同額を毎月給付)
  製造業社入社時には元金の半額と返済利息相当額を卒業時に一括給付(一定の条件を満たした場合に限る)
■理系条件
 理工学系であれば学部学科は問わない

 

 2014年12月、理系を志望する女子学生数の拡大と、継続的なキャリア構築支援により理系女子学生を育成し、自動車業界のみならず、製造業全体での女性活躍促進に貢献することを目的に設立。トヨタグループ12社からの寄附で事業を運営しており、育成プログラムで今後のキャリアを、奨学支援で経済面を支援しています。将来ものづくりの分野(製造業社)でエンジニアとしてのキャリアに興味があり、活躍していく意欲のある人を重視しており、育成プログラムに参加した女子学生の学科は、機械30%、化学20%、情報14%、電気・電子9%、材料5%、数物4%、建築・デザイン3%、環境・その他15%(2023年12月現在)となっており、トヨタグループの分野とおおむね合致しています。

<参考>
【トヨタ女性技術者育成基金】トヨタ女性技術者育成育成基金
【トヨタ女性技術者育成基金】出身地域・学科

⑤ 公益財団法人 日揮・実吉奨学会 給与奨学金制度(日本人学生向け)

■指定大学の学生(満30歳未満)
 2025年4月~5月に募集予定
■奨学金額
 40万円(1年間)
■理系条件
 指定72大学の学生で理系学部、研究科に在学する日本国籍をもつ学生

 

 実吉雅郎氏(さねよしまさお:日揮株式会社の創業社長)の遺贈により1968年に設立。理系の日本人学生、私費留学生への奨学金の給付、理系の若手研究者への研究助成を行うことを通じて、人材の育成と科学・技術の発展に貢献することを目的としています。奨学事業と研究助成事業があり、奨学事業は日本人向けと海外からの留学生向けがあります。日本人向けには給与奨学金制度、海外留学奨学金制度があり、いずれも大学が指定されています。学生が財団に直接応募することはできず、各指定大学の奨学金担当課を通じて応募することになっています。

●給与奨学金制度 指定72校
秋田大学、 茨城大学、岩手大学、宇都宮大学、愛媛大学、 大分大学、大阪大学、大阪公立大学(大阪市立大学、大阪府立大学)、岡山大学、お茶の水女子大学、学習院大学、鹿児島大学、金沢大学、関東学院大学、北見工業大学、岐阜大学、九州大学、九州工業大学、京都大学、熊本大学、群馬大学、慶應義塾大学、工学院大学、神戸大学、埼玉大学、佐賀大学、静岡大学、芝浦工業大学、上智大学、信州大学、成蹊大学、千葉大学、千葉工業大学、中央大学、筑波大学、電気通信大学、東海大学、東京大学、東京海洋大学、東京工業大学、東京電機大学、東京都市大学、東京都立大学、東京農工大学、東京理科大学、同志社大学、東北大学、徳島大学、鳥取大学、富山大学、豊橋技術科学大学、長岡技術科学大学、長崎大学、名古屋大学、名古屋工業大学、新潟大学、日本大学、日本女子大学、兵庫県立大学、広島大学、福井大学、北海道大学、宮崎大学、室蘭工業大学、明治大学、山形大学、山口大学、山梨大学、横浜国立大学、立命館大学、琉球大学、早稲田大学

<参考>
【日揮・実吉奨学会】奨学事業
【日揮・実吉奨学会】給与奨学金制度(日本人学生向け)

⑥ 品川区大学奨学金

■2026年4月に大学進学を予定する東京都品川区民
 2025年秋から募集開始予定
■補助額
 54万円(年額)
■理系条件
 「理系」とは記載はないが、大学の対象学部として医療系(医学・歯学・薬学・看護学)、理工農系(理学・工学・農学)が条件となっている

 

 東京都品川区で、2026年度以降の進学者を対象にして、理系学生向けに返済不要の奨学金を創設することが発表されました。東京都都内でも初の試みです。年収制限はありません。高校については、令和6年度、東京都の私立高等学校等授業料軽減助成金の所得制限撤廃により、都立高校・私立高校の授業料が無償化。高校に続く大学においては、保護者に一定の所得があっても、学費が高額な医学部や理系学部などでは進学を諦めざるを得ない場合があります。親の経済状況にかかわらず希望する人が大学に進学できるよう、授業料等を給付することで社会に貢献する人材育成を目指します。事業開始初年度の2026年度は、大学入学を予定する区内在住者 100人、2027年度は、前年度の給付者の更新に加え、入学予定者を対象とし、合計200人に奨学金を給付する予定。

<参考>
【品川区】品川区大学奨学金(19ページ)(PDF)

⑦ リクルートスカラシップ 学術部門 募集要項

■海外大学・院に進学する予定の24歳以下の方
 2025年7月からWEBエントリー予定
■2025年度の支援例
 年間上限9万5000ドル  生活費最大2万6400(月額2200)ドル
 ※学費は実費、生活費は月額固定
■理系条件
 QS/THE世界大学ランキングにおける該当分野

 

 株式会社リクルート創業10周年の際に「社会への貢献」を目的に検討され、「リーダーシップのある人・向学心旺盛な人・将来何かやりそうな人」を応援するため1971年に創設。理系分野専攻で卓越した研究成果を挙げることを目指して海外大学・院に進学し、在籍中に成果を論文等で発信することに意欲のある24歳以下を対象とした返済不要の奨学金。合格後は2年間奨学金(学費と生活費)を受給することができ、その後も毎年行われる更新審査に合格すると27歳まで奨学金が支給されます。採用人数は8名程度。

●分野の詳細
QS/THE世界大学ランキングの下記部門に該当する分野
・理系分野の該当可否については審査の中で判断。応募者の専攻が理系分野に該当するか否かについて事前に問い合わせても回答できないとのことです。
[QS World University Rankings by Subject]
Engineering & Technology / Life Sciences & Medicine / Natural Sciences
[Times Higher Education World University Rankings by subject]
Clinical & health / Computer science / Engineering / Life sciences / Physical sciences
※上記の部門のうち、心理学・建築学は含みません

<参考>
【公益財団法人江副記念リクルート財団】リクルートスカラシップ 学術部門

理系学部の認識は変化していくのか

 奨学金を給付する対象学部は、成長分野の研究者を増やしていくと考えれば、理工農系の中でも情報系や環境系が中心になりますし、企業における研究者を増やしたいと考えれば、各企業の研究分野に近い学部系統が中心になります。このように目的がはっきりしているものについて、奨学金対象の理系学部が限定されてしまうのは、仕方がないと感じます。

 しかし、理系分野の方が文系と比較すると学費が多くかかるという理由から、奨学金を出す場合などは、学部を限定してしまうと、不公平を感じる人が多いのではないでしょうか。特に、国や自治体が行っている奨学金については、今後もさまざまな議論がなされるのではないかと予測されます。

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大学ジャーナルオンライン編集部

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