国際文化観光都市・京都を舞台に、長年、グローバル人材の育成に取り組んできたのが京都外国語大学だ。語学教育を基盤に、2018年には国際貢献学部をスタート。なかでも、グローバル観光学科では、多文化共生や地域振興を担う人材の育成を目標に、社会科学の理論や技法に加え、国内・海外のフィールドワークで実践力を磨く学びを推進している。「京都を中心とした周辺地域のまち全体がキャンパスです。教室だけでは飽き足らず、アクティブに学びたい人は大歓迎」と話す、村山弘太郎教授に学びの特色を聞いた。
国際文化観光都市・京都をフィールドに、
社会科学の視点から観光を見つめ、課題解決に取り組む
「観光というと、旅行業やホテル業といったサービス分野のイメージが強いかもしれません。しかしグローバル観光学科では、観光という現象を研究対象に、社会学、歴史学、民俗学、経済学、哲学、心理学、データサイエンス、ビジネスなどの学問分野を用いて分析。社会の構造や地域の課題に対し、学際的にアプローチしていきます」と村山教授。
そのため、さまざまな専門分野の教員が配置されており、学生の興味関心に合わせたテーマに取り組むことが可能だ。先輩の例を紹介すると、「VRによる新体験創出とSNS広報」「京都ブランドの本質―イメージ調査を基に―」「推し活の変化~コロナ前とコロナ禍の違い~」「Instagramでのインフルエンサーに対するユーザーの行動分析」「日本のおもてなしと西洋のホスピタリティの比較によるおもてなし概念の考察」など、幅広い研究が並んでいる。
また、国際文化観光都市である京都という立地も、豊かな学びを後押しする。「千年の歴史と文化が蓄積された京都は、伝統と最先端の両方を備えたいわば生きた教材の宝庫です。ある授業では現地集合で二条城へフィールドワークにでかけ、次の講義では教室に戻って授業を受けるといったことができるのも本学ならでは」と村山教授は胸を張る。
「私は機会さえあれば学生をフィールドワークに連れて行ったり、お祭りに参加させたりしています。すると、現場に出る楽しさを実感した学生たちが自発的になるんです。京都での学びを通じて、将来的に自分たちの地元の課題も解決できる力や、社会で必要とされるジェネリックスキルを身に付けてほしいと考えています」
国内・海外の地域に出向き、関わり、実践する。
授業内外での多様な活動
同学科では、実践的な課題解決力を養うため、グループワークやフィールドワークを重視している。その代表が「コミュニティエンゲージメント」だ。学生が国内・海外の地域に出向いて、課題解決に取り組む実践型の学びとなっている。
その活動内容は、企業での課題解決型インターンシップ、地域でのサービスラーニング、海外の大学でのフィールドワークと幅広い。しかし共通しているのは活動プロセスだ。自ら問題を発見し、テーマを決めて調査・研究のための「活動計画書」を作成。数週間にわたってコミュニティの人々と協働し、解決策を探っていく。結果は報告会で発表する。
「コミュニティエンゲージメント以外でも、京都市内のバリアフリーマップを作成したり、祭礼の担い手不足解消のために国指定の重要無形民俗文化財である滋賀県の「大津祭」で地域住民と連携したりする学生がいるなど、意欲的な取り組みが見られます」と村山教授。
これらの取り組みが官学連携プロジェクトに発展するケースもある。昨年11月には、近畿運輸局主催の「関西観光アドバイザリー会議」に同学科の学生2名が参加。岸和田市のだんじり会館や岸和田城などの観光資源を視察し意見を発表したという。
学生たちはこうした実践経験を通じて、「多文化共生」を実現するためのコミュニケーション能力や問題発見力、異なる意見を調整し人々をまとめるコーディネート力などを総合的に身に付けていく。
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