文教大学には「育ての、文教」というスローガンがある。「育ての親」という言葉があるように、“どう原石を磨き、輝かせるのか。良さを最大限、引き出すのか。人を育てるエキスパート、プロフェッショナルとしての存在”との思いが込められている。実際その教育力には定評があり、特に教員養成分野で高い実績を誇る。「本学の建学の精神は、人間愛。教育を通じて、すべての人を尊重し、お互いに温かく慈しむことを目指しています。大学生活を通じて人間愛を理解し、社会に出てから体現して欲しい」と語る、宮武利江新学長に抱負を聞いた。
個々のニーズに寄り添った総合的支援体制を構築
変化の激しい時代を幸せに生き抜く力を育てる
この春、14代学長に就任した宮武利江新学長の指揮のもと、文教大学では「対話と協働による学生ファーストの支援体制」の構築が進められている。日々の学修から研究活動、就職に至るまで、各学部が協力しあい、個々の学生のニーズに添った支援体制を目指す。
その取り組みの一例が、学生一人ひとりのポートフォリオづくりだ。学修カルテによってこれまで自分がどんな経験や学びをしてきたのかを可視化。自分の望む将来に向けてどんな学びが必要か、何を学べばどのようなキャリア形成ができるのか、学生自身が構想をたてられるようにするのが狙いだ。また、教職員もよりきめ細やかなアドバイスができるようになる。あわせてデジタル化を進め、全学対応のシステムを構築する計画だ。
また履修の弾力化も視野に入れている。「文教には資格を取得してスペシャリストになることを望む学生が多くいます。しかしこれからの時代、多角的な視野を持つゼネラリストの素養も必要になるでしょう。一部の学部ではすでに学科を超えた学びを可能にしたり、副専攻を設けたりしていますが、今後は全学部に広げていくことを考えています」。ゆくゆくは専攻以外の学びも体系的に選び取れるよう、共通科目の再編も検討中だ。
「今は変化の激しい混乱の時代。そうした社会で幸せに生きるために、人から必要とされる力、悩まず困らず生き抜いていく力を身に着けて欲しい」と、宮武学長はその思いを語る。
新入生には特に手厚いサポートを用意し、
大学での自律的な学びへのスムーズな移行を支援する
一年次は少人数のクラス制を採用し、担任教員によるきめ細かなサポートを行っている。高校までとは異なり、大学では自分で授業を選択し、自律的に学びを進めていかなくてはならない。そのギャップに対しスムーズな移行を図るのが目的だ。
「クラスが同じであれば仲間意識が生まれやすくなります。国家試験の合格や資格取得を目指す学生も多いので、同じ目標に向かって頑張っている仲間の存在が励みになることも多いようです」と宮武学長。
また、2022年からは、全学共通の必修科目「文教大学への招待」を設置。新入生全員が春学期に履修するようカリキュラムに組みこみ、文教大学への理解を深め、大学での学びの基礎を習得できるよう配慮している。
学生の困りごとにも細やかに対応する。障害のある学生に対しては、入学前から必要な支援をヒアリングしサポート体制を整備。また、学生から生の声を受け止められるよう「学長直行便」という目安箱が設けられていて、学生はいつでも自分の要望や思いを大学へ届けることができる。その返事は必ず学長が自ら書くそうだ。
「本学では、学生一人ひとりへの目配りを大切にしたいと考えています。どこを磨けば輝きを増すことができるのか。一人ひとりの学生の個性や資質を見極めながら、教職員が一丸となってサポートします。自分が何をしたいのか迷っている人も、やりたいことがあるのに進み方がわからない人も、文教で一年過ごせば方向性が見つかるかもしれません」
3つのキャンパスの個性を生かし地域との連携を強化
“育ての、文教”そして“地域の、文教”へ
宮武学長が掲げる目標のひとつに、地域との共生がある。「“教員養成の文教”に加え、“地域の文教”を構築していきたい。学びの場を地域へと広げ、その交流の中で学生の総合力を育てるとともに、地域の子どもを育てる大学でもありたいと考えています」
文教大学には、埼玉、神奈川、東京に3つのキャンパスがあり、それぞれに異なる個性がある。そうした学部ごとの特色を活かしたボランティア活動や、地域イベントへの参加、学生自ら事業を起案・運営することを促進・支援していく。さらにこうした地域貢献プログラムを体験型の自由科目として単位化し、教職課程のオプションメニューとすることで質の高い教員養成にもつなげていく考えだ。
ここで3つのキャンパスの特色を見てみよう。教育学部・人間科学部・文学部を擁する「越谷キャンパス」は最も歴史があり、教員志望や資格取得を目指す学生が多い。サークル活動も盛んで、集団でにぎわうことが好きな、協調性豊かな雰囲気がある。情報学部と健康栄養学部が属する「湘南キャンパス」は、理系的な色があり、個々にやりたいことを探究する学究的なイメージだ。国際学部や経営学部のある「東京あだちキャンパス」は、積極的に学外とつながる、オープンな雰囲気がある。
「東京あだちキャンパスでは、大学と企業が協働して人材を育成するスタイルが定着しつつあります。学生の実習先として協力を得ているほか、企業のイベントに学生が参加し交流を深めている例もあり、産学連携の地域活性化に寄与できると考えています」
人間愛を軸に、対話による協働で人を育て、地域を育て、社会を育てていく。それが、宮武新学長の見据える文教大学の未来の姿だ。
<入試トピックス> 2025年4月、データサイエンス学科が始動
SNSの投稿、ECサイトでの購買履歴、人流データなど、現代の社会では大量のデータが刻々と生み出されている。こうしたビッグデータから、価値ある情報を見つけ出し、ビジネスや情報社会の課題発見・解決する力を身に着けるのが、情報学部(湘南校舎)に新設された「データサイエンス学科」だ。AIや数理統計、プロジェクトマネジメント、プログラミングなどデータサイエンスをゼロから学び、IT企業をはじめあらゆる分野で活躍できる人材を育成する。
文教大学
宮武 利江学長
1963年 埼玉県出身
2002年4月 文教大学着任
2015年4月~ 文学部長
2023年4月~ 付属図書館長
2025年4月~ 文教大学学長