東京大学などが参加するT2K実験(東海‐神岡間長基線ニュートリノ振動実験)国際共同研究グループは、ニュートリノにおいてCP対称性が破れている可能性が95%に高まったと発表した。
宇宙の始まりであるビッグバンでは、物質と反物質が同数生成されたと考えられている。しかし、現在の宇宙には反物質はほとんど存在しないため、物質だけが残った背景として物質と反物質の間になんらかの性質の違いが存在する、すなわち「CP対称性が破れている」と考えられてきた。どの素粒子が宇宙の成り立ちにかかわるCP対称性の破れを持っているか、最重要な研究課題のひとつとなっており、これまでに素粒子12種類のうちクォークのCP対称性の破れが発見されているが、残りの6種類のレプトンについては未解明である。
レプトンのうちの3種類であるニュートリノは、長距離を飛行する間に「ニュートリノ振動」という現象をおこして別の種類のニュートリノに変化することがわかっている。T2K実験グループは、ニュートリノにCP対称性の破れが存在する可能性を検証するため、ニュートリノ振動を詳細に調べる実験を行ってきた。そして2016年8月、ニュートリノと反ニュートリノの間でニュートリノ振動が起こる確率が異なっていることを信頼度90%で示唆する結果を公表した。
その後、新たに取得したデータと新しい解析手法によりデータ量を約2倍に増やし、今回、ニュートリノと反ニュートリノの違いがある確率は95%に高まり、レプトンにCP対称性の破れが存在する可能性がより明瞭になったことを明らかにした。今後、さらにデータを収集し、信頼度の引き上げを目指すとしている。