東京大学、海洋研究開発機構、国立歴史民俗博物館らの研究グループは、岩手県大槌町の船越湾などから採取した「ビノスガイ」の貝殻の年齢を調べ、ビノスガイが日本最長寿の海産二枚貝であること、また、貝殻の年間成長量が大西洋数十年規模変動と似た変動パターンを示すことなどを明らかにした。

 地球の気候は様々な周期で変動している。「貝の貝殻が一年でどれだけ大きくなるか」を知ることは、「その年の環境が貝の成長にどれだけ適していたか」の指標となるため、過去の貝の年間成長量を調べることで、過去の環境変動を明らかにできると考えられてきたが、日本海周辺海域においては長寿命の二枚貝はこれまで知られておらず、研究が進んでいなかった。

 2011年の東北地方太平洋沖地震以降、同研究グループは、岩手県大槌町の船越湾において津波の生態系への影響を継続的に調査しており、一連の調査の中で、大型のビノスガイを数個発見した。その中の1個体は92歳であり、2度の大津波を生き延びてきた長寿個体であることが明らかになった。樹木の年輪で用いられる手法を応用して貝殻の成長線から年間成長量を調べたところ、興味深いことに太平洋で採取した貝にも関わらず、大西洋の長周期気候変動に近いパターンを示していた。

 本研究により、成長パターンを複数個体で照合し時代をつなぐことで、数百年単位の長周期気候変動や水産資源変動のメカニズムに大いに役立つことが期待される。

論文情報:【Marine Environmental Research】Stimpson’s hard clam Mercenaria stimpsoni; a multi-decadal climate recorder for the northwest Pacific coast

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