京都大学の鈴木俊貴生態学研究センター研究員は、単語からその指示対象をイメージする能力を、ヒト以外の動物において世界で初めて明らかにした。

 野鳥のシジュウカラは天敵のヘビ(アオダイショウ)をみつけると「ジャージャー」と聞こえる特別な鳴き声を発し、仲間に警戒を促す。この鳴き声は、ヘビに遭遇した時だけ発せられる。従来、動物のコミュニケーションは話し手が聞き手の行動を機械的に操作する「命令」であると考えられてきた。今回、ヒトの言語と同様に仲間に、鳴き声(単語と考えられる)によってヘビのイメージを想起させるかどうかを実験的に検証した。

 シジュウカラはヘビに遭遇すると接近して威嚇行動をとる。そこで、ヘビ特異的な鳴き声をスピーカーから再生してシジュウカラを誘引し、20cmほどに切った木の枝に紐をつけて離れた場所から引っ張り、ヘビが幹をはい上がるように動かしてみせた。その結果、ほぼすべてのシジュウカラ(12羽中11羽)が枝の動きに対して1m以内に接近した。一方、他の鳴き声(集合声、警戒声)では、枝の動きにはほとんど接近しなかった。

 一方、枝をヘビと異なる動きをさせてヘビ特異的な声を聞かせると、ほとんど近づかなかった。つまり、ヘビ特異的な声を聞いたシジュウカラは、単に動く物体に接近するのではなく、ヘビのように幹や地面をはっている枝に接近することが分かった。

 これにより、シジュウカラは目の前にヘビがいなくても、ヘビ特異的な鳴き声から「ヘビ」の視覚イメージを想起し、それを目の前の物体に当てはめてヘビを探索することが判明した。鳥類がヒト同様の認知機構を用いて音声の意味を理解することを示した画期的な成果とされる。

論文情報:【Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America】Alarm calls evoke a visual search image of a predator in birds

京都大学

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