帯広畜産大学環境農学研究部門の小山耕平助教は、中央大学や京都大学との共同研究により、樹木の枝分かれ構造から末端の枝サイズが対数正規分布になることを形態計測により実証した。多細胞生物の形態において、分岐構造から対数正規分布が生成されることを示した研究は世界初。成果はイギリスの科学誌『Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences』に掲載された。

大きさが倍々に増えていく(または減少していく)物体の最終サイズが対数正規分布(注)する過程は「乗算過程(ジブラ過程)」と呼ばれる。生物学以外の分野においても様々な現象が報告されており、経済学において貧富の格差が広がっていく過程、また鉱物含有量の地理的分布の偏りを生成する過程などがある。

今回、小山助教らの研究グループは樹木(十勝帯広の森林に自生するハルニレ)の枝分かれ構造から末端の枝サイズが対数正規分布になることを形態計測により実証した。これまでの樹木生理生態学では、樹木全体のサイズおよび機能を扱う「スケーリング理論」および「アロメトリー理論」と、個々の葉や枝の可塑性(変化)を取り扱う生理生態学の理論との間には接点がなかった。

今回の研究成果を発展させれば、複雑で計算が困難な森林の枝葉の集団の成長および機能を、比較的簡単な確率モデルとして取り扱うことが出来るようになることが期待される。

注:正規分布は連続した確率分布の典型的な例(グラフは通常左右対称の釣り鐘型)。確率変数の対数値がこの正規分布をする場合、対数正規分布と呼ばれる。

論文情報:【Proceedings of the Royal Society B: Biological Sciences】:A lognormal distribution of the lengths of terminal twigs on self-similar branches of elm trees

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