1992年に開学した城西国際大学は、千葉県と東京都に計3カ所のキャンパスを有し、現在は8学部を擁する総合大学として、国内外に広く認知されています。2017年4月に同大学の学長に就任した杉林堅次氏に、同大学の目指すグローバル人材育成のための教育方針と今後の展望について、お話を伺いました。

 

——城西国際大学は、どのような特色を持っている大学なのでしょうか。

杉林堅次学長(以下杉林):日本には「国際大学」という名称を冠した大学が何校かありますが、そもそも日本に国際大ができたのは、比較的最近のことです。第二次世界大戦後に東京と大阪に外語大が設立されて、その当時から「語学力は重要だ」という認識は、日本人にもあったのだと思います。ただ、グローバル化や国際連携などを重視した教育を行う国際大が登場したのはもっと最近で、城西国際大学も創立から26年という歴史です。そんな中でも本学は、8つの学部を擁している総合大学という、国際大としては珍しい位置付けの大学だと思います。

——貴学では、城西大学の創立者である水田三喜男先生の掲げられた「学問による人間形成」という理念を建学の精神として継承されていますが、学生の方々にはその理念をどのように伝えているのですか?

杉林:「学問による人間形成」という理念は、学問それ自体を目的とするのではなく、学問を通じて、人として立派になる、社会に役立つ人材になることの方が大切だ、という意味だと私は思っています。城西大学ができたのは前回の東京オリンピックの翌年で、日本が再び国際社会に仲間入りした頃でしたから、国を支えることのできる人材を数多く育てる必要がありました。私は今66歳ですが、学生だった頃は「がんばれば何とかなる」という雰囲気が世の中にあって、みんな目がキラキラ輝いていました。でも、それから約50年経って、今の社会や学生たちの間には「やっても仕方ない、頑張ってもどうにもならない」という雰囲気があります。先生方や職員も、そういう雰囲気の中で学生たちを指導していくことに苦労しているようです。今の世界には、どう解決すべきか、その答えがなかなか見つからないような問題が、本当にたくさんあります。受験勉強などで学ぶ問題は、必ず答えのある問題です。私たちはそういう答えの予測できる問題を出して、それを解けるかどうかで学生を評価していますが、世の中には解けない問題の方が多いですから。答えはないかもしれない。でも、何かしなくちゃいけない。こういう時代だからこそ、もう一回、城西大学が開学した頃の感覚を呼び起こして、自分たち自身を見直していくべきなのでは、と考えています。

——貴学には現在、海外からの留学生が約1000人在籍されているそうですね。

杉林:そうです。このくらいの規模になると、「キャンパス内留学」と呼べるような体験も可能になると思います。実際、入学してから外国人留学生との交流を通じて、一気に能力を伸ばす学生も大勢います。そういう人材を育てるのが我々の役目です。一方で外国人留学生たちも、日本でいろんな経験をしていますね。たとえば、韓国では八百屋さんで野菜を買う時、挨拶代わりに「今日はいい野菜がありますか?」と聞く習慣があるんですが、だいぶ日本の生活に慣れてきた韓国人の留学生が、日本の八百屋さんで聞いたら、「うちに悪い野菜はない!」と怒られたと(笑)。日本と海外の国々の間には、そういったちょっとした感覚の違いが、たくさんあるんです。学生時代には、そういうことをたくさん経験しておかないと。自分の考えの幅を、若いうちから固定してしまってはダメなんですよ。

——貴学では現在、千葉県の東金キャンパスと安房キャンパス、東京都の紀尾井町キャンパスと、3つのキャンパスをお持ちですよね。

杉林:千葉と東京のキャンパスは、車や電車を使えば1、2時間で行き来できる距離にありますが、土地柄や雰囲気はまったく異なりますし、学生の気質もおのずと違ってきます。両方のキャンパスを知ることで得られるメリットもあると思います。また、特に東金や安房では、地域と密着した教育というものが必要だと感じています。たとえば、本学には外国人の先生も多いですし、英語が得意な外国人留学生も多いですから、そういう方々に地元の小学校で特別授業をやってもらうなどしています。また東金キャンパスには、看護、薬学、福祉、理学療法など、医療系の学部と学科がありますが、医療ではIPE(専門職連携教育)が非常に大切なので、地域の方々と一緒に、学生がさまざまな職種への理解を深めることのできるような教育をしていきたいと考えています。

——学生の方々に対するキャリア形成教育は、貴学ではどのように行われているのでしょうか。

杉林:本学では、将来必要な能力や資格の取得を目指してもらうために、各学部・各学年ごとに内容の異なるキャリア形成プログラムを設けています。キャリア形成に必要な学びは、学年ごとのレベル、社会人数年目までのレベル、その後のレベルと、段階的にレベルアップさせていくべきだと考えています。あと、キャリア形成とはそもそも何なのかと考えると、それはおそらく知識量ではなく、何かが起こった時に自分で考え、判断して、行動に移すことのできる力を身につけることなのではないかと思います。

——貴学では2018年度から、一般入試の成績上位者に対して、授業料の全額または半額を免除する特待生制度の導入が始まりましたが、その狙いは?

杉林:従来であれば城西国際大学には来なかったような、ちょっと変わった人を採りたい、と考えました。今まで来なかったような人が大学にいると、雰囲気も感覚もかなり変わりますから。日本人は、人と違う特徴があることを嫌がる傾向がありますよね。でも私は、みんなが右側を行くなら、一人で左側を行きたいタイプだったんです。右側に面白いものがあるなら後でみんなに教えてもらえばいいから、自分は左側に行って、みんなが見られないものを見てこよう、と。人と同じことをやっていたら勝てない、という感覚がずっとありました。僕自身は科学者ですから、「ナンバーワンにならなきゃいけないんですか?」と訊かれたら「イエス」と答えます。ただ、その分野は、何を選んでもいいんですよ。自分がオンリーワンになる分野を選べば、それはその分野のナンバーワンということですから。そういうものの見方のできる、ちょっと変わった人にぜひ来てもらいたいですね。

特待生制度については詳しく知りたい方はこちら»

——今後の貴学の目指す方向性についてお聞かせください。

杉林:日本には約600校の私立大学があるそうですが、その大半が18歳以上の日本人を対象にしています。今後、その対象者はどんどん少なくなっていきますから、このままで行くと、共倒れになるわけです。そこでやっぱり鍵となるのは、特徴付けをしっかりしていくことではないでしょうか。城西国際大学も、外国語だけでなく、海外の文化まででもなく、そこからさらに幅広い分野にわたるグローバル教育を進めていくべきでしょう。創立から26年を経た今、そのための土壌は整ってきているのでは、と感じています。この苦しい時期だからこそ、打って出たいと僕は考えています。

城西国際大学
学長
杉林 堅次 先生
1951年 滋賀県 生まれ
1974年 富山大学 卒
1976年 同大学院薬学研究科 修了
同年、城西大学薬学部助手。
1998年 同学部の教授。
2013年4月 城西国際大学 副学長
2017年4月 城西国際大学 学長

 

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大学ジャーナルオンライン編集部

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