東北大学の湯上浩雄らの研究グループは、幅広い波長の光を含む太陽光を、太陽電池に最適な波長の熱ふく射に変換し発電する太陽熱光起電力発電システム(Solar-TPV)において世界トップレベルの発電効率5.1%を達成した。

 太陽から放射される光(熱ふく射)は幅広い波長分布(スペクトル)を持つ。単接合太陽電池(半導体材料が1種類のもの)は短波長の光しか電気に変換できない(注)ため、長波長の光は無駄になる。一方、太陽電池を複数枚重ね合わせた多接合太陽電池は、吸収できる波長域を拡げることで幅広い波長の光を電気に変換できる。しかし、多接合太陽電池は作製が難しく生産コストが高いといった課題がある。

 Solar-TPVは、太陽光が太陽光選択吸収材料で熱に変換された後、波長選択エミッタ(波長選択性熱放射が可能な装置)からの熱ふく射に変換する光子から光子への波長変換システム。そのため、吸収した太陽光のエネルギーを損失なく波長選択エミッタのみに輸送した後、光エネルギーを効率よく電力に変換(光電変換)する必要がある。

 今回、新しい概念(「熱ふく射のスペクトル制御」と「熱ふく射の一方向への輸送」)に基づいた太陽光の変換・輸送効率を提案し、新たに光学設計と幾何学設計を行った。その結果、熱ふく射輸送効率54%、光電変換効率28%が期待できる太陽光選択吸収材料と波長選択エミッタの設計と作製に成功し、世界トップレベルの発電効率5.1%を達成した。

 この研究成果により、多接合太陽電池とは異なる概念による高効率太陽光発電の実現が期待される。また、今回提案した概念は、未利用エネルギーの有効利用に関連してさまざまな分野への適用が可能であると考えられる。

(注)結晶には電子が存在できない領域(バンドギャップ)があり、通常の半導体材料では長波長領域に存在する。

大学ジャーナルオンライン編集部

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