畿央大学理学療法学科の松本大輔准教授、高取克彦教授は、要介護状態になるリスクが特に高い後期高齢者を対象に4年間の前向き調査を行い、新規要介護認定について地域内(小学校区間)に格差があることを我が国で初めて明らかにし、IJERPH(国際環境研究公衆衛生ジャーナル)誌に発表した。
厚生労働省は現在、「二十一世紀における第二次国民健康づくり運動(健康日本21(第二次))」を推進し、健康寿命の延伸・健康格差の縮小を目標として掲げている。健康寿命の延伸とは要介護状態にならないように予防すること。今までに要介護状態になるリスクに関連する要因についての研究は多く行われてきた。一方、健康格差について、都市部・農村部での比較や都道府県・市町村間での結果は示されてきたが、格差の縮小のためにはそれぞれの市町村でより小地域での検討が必要とされる。
そこで今回、A市在住の後期高齢者約5000名を4年間追跡調査し、新規要介護認定に関連する要因について調査した。その結果、関連する要因として年齢、性別、病気、フレイル※を調整しても、特定の小学校区では要介護状態になるリスクが約1.7倍も高いことが分かった。さらに、複数の種類の社会参加はリスクを約30%下げることも明らかになった。
今回の結果から、より生活に密着した小地域の実態を把握・分析することで、介護予防の解決の糸口につながる可能性を指摘している。今後は、社会経済的要因や環境要因(歩きやすさ)などの視点を加え、地域内格差の原因の解明に向けて研究を続けるとしている。
※加齢に伴って心身の機能が低下し、健康障害に対して脆弱性が増した状態のこと。