兵庫医科大学脳神経外科学講座の吉村紳一主任教授、臨床疫学講座の森本剛教授らの研究グループが2018年に開発した病院前脳卒中病型判別システム「JUST Score」は、脳卒中の疑いがある患者を最初に評価する救急隊などの医療従事者が、瞬時に病型予測を行い、適切な治療施設へ搬送するための支援システムとして活用されている。

 このような病院前脳卒中予測モデルの診断の正確性については、既に世界中で広く研究されているが、今回、同グループは、世界で初めての試みとして、「病院前脳卒中病型判別システムへの機械学習の導入」と「病院前脳卒中病型判別システムを利用した時の治療までの時間短縮効果の実証」に取り組み、その成果がいずれも国際的な医学誌に同時掲載されたことを報告した。

 まず、「JUST Score」は、過去の研究データを基にして作成されるために、様々な地域の特性や時代背景の変化への対応が遅れる可能性があった。この課題を解決するために、最新の地域データをリアルタイムに反映する(AI化する)機械学習モデル「JUST-Machine Leaning」を開発した。結果として、脳卒中のタイプに関わらず「JUST Score」よりも「JUST-Machine Leaning」の方が識別能が高く、診断精度の向上が認められた。

 次に、「JUST Score」の導入前後で、救急隊員が脳卒中を疑った患者の搬送結果や、搬送後の治療結果がどのように変化したかを比較分析した。その結果、「JUST Score」を使用することによって、救急隊の病院との交渉回数の減少、搬送時間(発症から治療までの時間)の短縮の効果が認められることがわかった。

 以上から、「JUST Score」は脳卒中の患者が早期に適切な治療を受けられる可能性を高め、結果として患者の予後の改善に資するとしており、今後も「JUST Score」の最適化をめざした研究を継続するとしている。

参考:【兵庫医科大学】脳卒中の可能性がある患者を病院搬送前に診断できる「JUST Score」世界初の2つの臨床応用結果が国際的な医学誌に同時掲載~後遺症軽減、社会復帰に向けて大きく前進~

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