東京大学と国立成育医療研究センターの研究で、アトピー性皮膚炎で特有の尿中脂質の濃度上昇が認められることがわかり、アトピー性皮膚炎の新しい尿中バイオマーカーとして有用である可能性が示唆された。

 アトピー性皮膚炎の診断では、主に採血により血中のバイオマーカー測定が用いられるが、本疾患は乳児期に発症することが多いため、小さな子供に採血の負担をかけることのない方法の開発が求められている。そこで本グループは、子供からでも採取しやすい尿中にアトピー性皮膚炎のバイオマーカーを探索することとし、アトピー性皮膚炎のモデルマウスの尿中物質を解析した。

 その結果、アトピー性皮膚炎マウスの尿では、脂質の代謝産物である13,14-dihydro-15-keto-tetranor-PGF1αや13,14-dihydro-15-keto-tetranor-PGE2、13,14-dihydro-15-keto PGJ2の濃度が増加していた。また、炎症を起こした皮膚の遺伝子やたんぱく質の発現を確認すると、これらの脂質の合成に関与する酵素の発現上昇が認められた。つまり、炎症を起こした皮膚の上皮細胞(ケラチノサイト)がこれら脂質の産生元であり、その代謝産物が尿に排泄されていると考えられるという。

 この結果をもとに、国立成育医療研究センターに来院したアトピー性皮膚炎患者の尿中脂質も測定したところ、同じく上記の脂質が多く排泄されていることが確認された。アトピー性皮膚炎マウスと同様、アトピー性皮膚炎患者でも、皮膚で産生された脂質が代謝され、尿中に脂質代謝物が排泄されていると考えられる。

 この成果は、採血する必要なくアトピー性皮膚炎を診断できる新たな尿中バイオマーカーの開発に有用と期待される。

論文情報:【The FASEB Journal】Urinary lipid profile of atopic dermatitis in murine model and human patients

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