京都大学科学研究所の小野輝男教授の研究チームは超分子を用いた人工分子モーターを作製し、分子同士の結合を組み替えることでモーターを逆回転させる動作を実現しました。分子モーターは単細胞生物の運動などに使われ、生命活動に欠かせないものです。これをヒントに人工分子モーターを作製して、ナノスケールの機械の部品にすることはナノテクノロジーの大きな夢です。

 今回の研究の特徴は超分子を利用した点です。通常の分子は原子同士が強く結びつく共有結合でつながっています。さらに複数の分子が集合して水素結合のような弱い結合を作ることで、高度な構造を持つ分子が超分子です。これまでに作製された分子モーターは強い結合で構成されており、一度作製するとその構造を組み替えることができず、回転方向をコントロールするのが困難でした。一方、超分子で構成された分子モーターでは比較的容易に構造を組み替えることができます。材料として使用したのはポルフィリン誘導体という水素結合を作る板状の分子です。板の中心に空いた穴に金属原子を入れることで、そこを中心に回転させることができます。さらに水素結合を組み替えることで回転方向を変えることに成功したのです。 

 生物が持つ分子モーターは人工ものと比べて複雑な構造をしており、その動作の詳細はまだわかっていない部分もあります。人口分子モーターの研究がそういった謎に迫る手掛かりになるかもしれません。そればかりか複数の部品を作製し組み合わせることでより複雑で高度なナノスケールの機械の構築を目指していくとしています。SFに登場する微小な機械を実現するヒントは生命の中にあるのかもしれません。

出典:【京都大学】人工分子モーターの回転方向制御を超分子で実現 -柔軟に動作するナノマシン大量生産への道を拓く-

京都大学

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