北半球最強の暖流である黒潮とメキシコ湾流が、北米大陸を挟んで約一万キロメートルと遠く離れているにもかかわらず、数年から十数年のスケールで同時に暖かくなったり冷たくなったりを繰り返している(=「同期」している)ことが、お茶の水女子大学、東京大学、海洋研究開発機構などの共同研究グループにより明らかにされた。

 本研究によると、黒潮とメキシコ湾流は、中緯度地域の上空に一年中存在する強い西風である「偏西風ジェット気流」の南北移動を介して、互いの海流の強さや流路の変動の情報が交換され、水温を同期させているという。この同期にともなって、日本東方沖とアメリカ東海岸沖の海面水温が同時に暖かくなったり冷たくなったりを繰り返している。本現象は「境界流同期」と名付けられた。

 境界流同期は、近年発展してきた、赤外線で海面水温を測定する高解像度衛星観測、スーパーコンピュータ上に大気や海洋を再現する全球気候モデルを用いた高解像度気候シミュレーションの両者において検出され、データ解析により統計的にも実証された。

 また、黒潮とメキシコ湾流の近海における海面水温の変動と大気の関係を解析すると、二つの海流が平年よりも暖かいとき、偏西風ジェット気流が北に移動(北偏)する傾向があるとわかった。こうした結果から、本研究では、境界流同期が、大気と海洋が互いに影響を及ぼし合いながら変動する現象であるとの仮説を提唱している。

 さらに、境界流同期にともなう偏西風ジェット気流の変動によって、日本を含む北半球中緯度域の大都市圏を狙い撃ちするかのように、猛暑などの異常気象がもたらされる傾向も認められた(1994年と2018年の7月の猛暑など)。

 本現象への理解は、異常気象の予測や、日本東方沖の水温や流れの影響を受けるイワシやサンマといった水産資源の管理にも資する知見となることが期待される。

論文情報:【Science】The Gulf Stream and Kuroshio Current are synchronized

東京大学

明治10年設立。日本で最も長い歴史を持ち、日本の知の最先端を担う大学

東京大学は東京開成学校と東京医学校が1877(明治10)年に統合されて設立されました。設立以来、日本を代表する大学、東西文化融合の学術の拠点として、世界の中で独自の形で教育、研究を発展させてきました。その結果、多岐にわたる分野で多くの人材を輩出し、多くの研究成[…]

お茶の水女子大学

社会をリードし時代を創る女性たちを育てる、国立総合女子大学。

お茶の水女子大学は、1875(明治8)年に東京女子師範学校が設立されたことに始まります。以降、学ぶ意欲を持って社会のために役立ちたいと望む女性たちのために、女子教育の先達として、道を切り拓いてきました。そして今も、広い知識と豊かな想像力を備え、豊かな未来を創造[…]

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