産業医科大学では、2021年2月に「手術日までの過ごし方を、がん手術を待つ多くの患者さんへ」というクラウドファンディング事業を立ち上げ、目標金額を達成。その成果物として、がん手術を控えた患者が術前から始める準備「プレハビリテーション」に関するガイドブックや動画を作成した。

 がんの告知を受けた患者の多くは、ショックから精神的に落ち込んだ状態がしばらく続き、外出して体を動かす機会が減り、食欲もなくなってくる。このため、手術までの間にさらに栄養状態が悪化し、体力が低下するといった悪循環におちいることがあるという。手術を受ける時点で、患者の栄養状態が悪かったり、体力や筋肉量が落ちたりしている場合、術後の合併症が増えて死亡リスクが高くなるこもわかっている。

 このような事態を避けるために、手術前からリハビリテーションを開始する重要性が注目され、欧米を中心に医療の現場に導入されつつある。実際に海外における多くの研究結果より、患者が手術までの間に運動をふくめた総合的なリハビリテーションを行うことにより、手術の合併症が起こるリスクが減り、早期に回復することが証明されている。この手術前からはじめるリハビリテーションのことを、 プレハビリテーション(prehabilitation)と呼び、もともと整形外科の領域で始まったが、最近ではがんの手術にも適用されることが増えてきた。

 今回作成したガイドブックと動画では、がん手術を控えた患者に向けて、プレハビリテーションのメニューや必要性のほか、栄養状態を改善する食事療法、不安を軽減させる精神的ケア、がん手術前にやるべきこと、がんの手術を控えた患者への家族の対応などを紹介している。

 産業医科大学は、これらをによってがんと告知されて不安な日々を過ごしている患者が出来るだけ早くショックから立ち直り、手術日までの期間、自分でできる準備を少しでも前向きに行う一助となることを願い、ホームページに公開している。

参考:【産業医科大学】手術待ちの患者さんを支援するため、術前から始める準備を提案

産業医科大学

大学ジャーナルオンライン編集部

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