東北大学と札幌医科大学の研究グループは、歯科治療に用いられるパラジウムによる金属アレルギー誘導機構を明らかにした。

 金銀パラジウム合金は保険診療での歯科金属材料として、銀歯の治療など歯科治療で広く用いられている一方で、パラジウムが金属アレルギーを引き起こす一因となることが問題となっている。酸性の食物や口内に残った食べ物の分解、口腔細菌の代謝産物によって溶け出したパラジウムが、抗原提示に何らかの影響を与え、T細胞を活性化させると金属アレルギーを発症すると考えられているが、金属によるT細胞活性化のしくみは不明だった。

 本研究では、抗原提示細胞のひとつである樹状細胞株にパラジウム溶液を添加すると、免疫反応を引き起こすMHC(主要組織適合性遺伝子複合体)クラスIが一時的に細胞内に取り込まれ、その後、細胞表面に再出現することを見出した。このとき、細胞内在化に伴い、MHCクラスI上に提示される抗原ペプチドが置き換わり、アレルギー抗原となることがわかったという。抗原ペプチド置換により発現したアレルギー抗原は、T細胞の活性化を誘導し、パラジウムアレルギーの発症につながるとみられる。

 この発見から、パラジウムが引き起こすMHCクラスIの内在化を阻害すると、T細胞の活性化を抑制できることもわかった。抗原ペプチドの置換を防ぐこと、アレルギーの原因となる抗原ペプチドを特定することなども、歯科金属アレルギーの新しい予防・治療法の開発につながることが期待される。

論文情報:【Frontiers in Immunology】Palladium-induced temporal internalization of MHC Class I contributes to T cell-mediated antigenicity

東北大学

イノベーションの源泉となる優れた研究成果を創出し、次世代を担う有為な人材を育成

東北大学は、開学以来の「研究第一主義」の伝統、「門戸開放」の理念及び「実学尊重」の精神を基に、豊かな教養と人間性を持ち、人間・社会や自然の事象に対して「科学する心」を持って知的探究を行うような行動力のある人材、国際的視野に立ち多様な分野で専門性を発揮して指導的[…]

札幌医科大学

伝統と実績を兼ね揃えた、世界をリードする医科系総合大学

1950年に北海道立札幌医科大学として開学。半世紀以上の長期にわたって、人間性豊かな医療人を育成するとともに、北海道の保健・医療・福祉の向上に大きく貢献しています。現在、多様化する医学・医療の発展に対応し、臨床能力・技術を養成している医学部と、人々の健康を生活[…]

大学ジャーナルオンライン編集部

大学ジャーナルオンライン編集部です。
大学や教育に対する知見・関心の高い編集スタッフにより記事執筆しています。