東北大学大学院理学研究科上田実教授、理化学研究所袖岡有機合成化学研究室/環境資源科学研究センター袖岡幹子主任研究員/グループディレクター、名古屋工業大学材料科学フロンティア研究院築地真也教授らは、病原因子の気孔再開口作用に、これまで知られていた機構以外に、小胞体の関与するバイパス機構が関与することを発見した。
世界の農産物生産量の予定収穫量の15%は病害によって失われており、これは、5億人分の食料に相当する。病害による損失の抑制は世界的な課題である。
病原菌は葉表面の開口した気孔から植物体内に侵入して感染し、植物は免疫応答として気孔を閉じて感染を防ぐ。さらにこれに対応して、病原菌は感染因子コロナチンを分泌して気孔を再開口させ、体内に侵入する。
コロナチンは虫害に対する抵抗性機構をハイジャックする作用を持つため、これまで、病原菌感染(病害)と虫による害(虫害)に対する抵抗性は同時に強めることが出来ないとされてきた。しかしながら、同グループは、今回、新たに小胞体の関与するバイパス機構があることを発見した。新規の機構は、虫害への抵抗性には影響しないため、このバイパス機構を利用して、植物への病原菌感染を防ぐ新しい薬剤の開発が期待される。
論文情報:【ACS Central Science】Non-canonical function of a small-molecular virulence factor coronatine against plant immunity: An In vivo Raman imaging approach