富山大学学術研究部薬学・和漢系/和漢医薬学総合研究所・未病分野の犬嶌明子博士研究員および小泉桂一教授と和漢医薬教育研修センターの柴原直利教授らは、生薬の煎じ薬中に耐熱性のRNAが存在し、さらにこのRNAが免疫活性化効果をもつことを明らかにした。
漢方薬をはじめとする生薬のうち、いくつかには、免疫活性化作用の報告がある。しかし、生薬の免疫活性化の有効成分についてはよくわかっていないのが現状だという。
従来、生薬の二次代謝産物に含まれる有効成分に注目した研究が主流であり、生薬の一次代謝産物についての研究はほとんど行われていないことから、本研究者らは、一次代謝産物である核酸のひとつ、RNAに注目した。
まず、生薬の煎じ薬を製造するために、収穫した植物を乾燥し、さらに熱水で煮る工程を経ても、そもそもRNAが分解せずに存在しているのかを確認した。結果、生薬である甘草の煎じ薬中には、25〜200塩基の耐熱性RNAが存在していた。このうち約30%が甘草由来のRNAで、その他は様々な微生物の遺伝子由来だった。
次に、このRNAをマウスのマクロファージ細胞に作用させたところ、免疫活性化が誘導されることが明らかとなった。具体的には、炎症や細胞増殖などの調整を行う遺伝子の制御因子として知られる「転写因子NF-κB」の活性化と、炎症を調節するタンパク質「炎症性サイトカイン」の産生亢進が確認されたとしている。
以上から、生薬の煎じ薬に免疫活性化作用を有する耐熱性RNAが存在することが見出された。RNAが生薬・漢方薬の免疫活性化の有効成分のひとつであるかもしれないことは、生薬・漢方研究における初めての発見である。今後は、生薬の煎じ薬に含まれるRNAによる免疫活性化機序の詳細を明らかにすることを目指すとしている。