岡山大学の研究グループは、ラベンダーの主成分であり、香味野菜として親しまれているパクチーにも多く含まれる「リナロール」が、放射線防護効果を持つことを明らかにした。

 放射線防護剤は、放射線事故などによる被曝の際や、放射線治療で過剰な被爆を防ぐためなどに使用される。現在有効性が認められヒトに用いられている放射線防護剤には、吐き気、アレルギー、血圧上昇などの副作用があり、安全に使用あるいは摂取できる放射線防護剤が求められてきた。

 研究グループは、古来から生薬や香料として広く用いられてきた精油(アロマオイル)成分について放射線防護効果を検討。結果、ラベンダーやパクチーに含まれ、香料として広く日用品にも使用される「リナロール」が、放射線に対して防護効果を有することを発見した。リナロール処理を施したマウスリンパ種細胞に致死的であるエックス線を照射しても、細胞の生存に影響を及ぼさないうえ、放射線による細胞損傷の第一標的である核DNAの損傷も、リナロールの抗酸化作用によりほぼ完全に防護されることが判明した。

 本研究成果は、精油成分を用いた安全な放射線防護剤の開発と利用の進展につながるもの。リナロールはヒトに安全な化合物であり、日常的に摂取できることから、予防的な放射線防護効果も期待できる。さらに、他の精油成分の中にも同様の効果を有するものがあると予想されており、その発見が待たれるところだ。

論文情報:【Journal of Radioanalytical and Nuclear Chemistry】In vitro analysis of radioprotective effect of monoterpenes

岡山大学

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