東京都立大学のグループは、壁に吹き付けられた泡沫が液体を失うメカニズムを明らかにし、液体流出を防いで泡沫を長時間保持させる条件を見出すことに成功した。

 泡沫は、液体中に多数の気泡が高密度に詰まった状態を指し、ハンドソープや洗顔フォーム、食器洗い用洗剤など、日常の様々な場面で利用されている。壁に吹き付けられた泡沫は、ある程度の時間、壁にとどまることができるため、ただ液体をかけた場合よりも長く、有効成分の効果を発揮させることができる。しかし、重力下では、泡沫の上部から下部に向かって液体が流れていき、泡沫の下端に溜まった液体が泡沫からちぎれる現象(ピンチオフ)も確認される。

 本研究では、このピンチオフが起こる物理的条件とメカニズムを解明することに成功した。平行板に挟まれた泡沫滴の重力下での振る舞いを観察するシンプルなモデル実験と理論により、泡沫滴下端から液体がピンチオフする条件を説明する計算式を導出した。

 この理論式から、泡沫においてピンチオフによる液体流出を防ぐためには、泡沫滴下端に溜まる液体の質量がある閾値を超えないようにする必要があることを見出した。これには泡沫に含まれる液体の絶対量を少なくすることが重要であること、また、ピンチオフまでの時間を長くするためには、泡沫の気泡を細かくすることで液体の排水(下方への輸送)を遅くすることが有効であることもわかった。

 本研究成果は、顔にシェービングフォームを塗ったり、壁に洗浄用の泡沫を吹き付けたりなど、重力が影響する環境での泡沫の制御にヒントを与える。ピンチオフを防いで泡沫を長時間同じ場所に保持し、効率よく有効成分の機能を発揮させることは、SDGs達成にも大きく貢献することにつながるだろう。

論文情報:【Soft Matter】Pinch-off from a Foam droplet in a Hele-Shaw cell

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