東京大学大学院総合文化研究科の吉田丈人准教授らの研究グループが福井県の三方五湖(みかたごこ)地域の中学生を対象にアンケート調査したところ、心理の中に自然と地域社会の重なりを発見した。三方五湖は環境教育が盛んな地域だけに、環境教育が自然や地域社会について考えるきっかけになったとみられる。

 東京大学によると、調査は三方五湖地域の公立中学校の生徒を対象に実施し、200人の有効回答から彼らが理想と考える自然、地域社会との心理的関係性を統計解析した。

 その結果、人と自然、人と地域社会の心理的関係性に対し、学年や卒業した小学校、中学校時代に自然の中で過ごした時間、環境活動への参加頻度、視線や環境問題について話す頻度、地域の祭りや行事への参加頻度が影響を及ぼしていることが分かった。しかも、人と自然、人と地域社会の心理的関係性は相互に結ばれていた。

 研究グループは人と自然、人と地域社会の心理的関係性を定量的に示した初めての研究としており、環境教育や持続可能な開発に向けた教育が学校教育の中で模索されている今、自然と地域社会に関する学びを相互に関連付けた教育や地域の行事への参加推進が必要と提案している。

 ただ、周囲に自然が少ない都市部や環境教育に力を入れていない地域では異なる結果が出る可能性があるとみて、より多くの地域で同様の研究を進め、地域特性を踏まえた教育内容を考えることが必要としている。

論文情報:【日本生態学会誌】人と自然および人と地域社会の心理的関係性とそれに影響する属性および習慣的要因:自然再生が進む地域の中学生を対象とした分析

大学ジャーナルオンライン編集部

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