コロナ禍による臨床経験の不足に研修医の多くが不安を抱え、指導医からこれまで以上に具体的な指導を求めていることが、関西医科大学教育センターの林幹雄助教らの調査で分かった。

 関西医科大学によると、林助教らの研究グループは新型コロナウイルス感染拡大で臨床試験の中止を経験した研修医1年目の51人を対象にインタビュー調査を実施し、結果を分析した。研修医の内訳は関西医科大学出身者が31人を占め、男性26人、女性25人、24~41歳の平均年齢26.5歳だった。

 その結果、臨床実習の中止で研修医の間で強い自立心とプロ意識が芽生える好結果が出たものの、シミュレーション教育の限界や精確な診療手技への不安などが生じ、総じて臨床に対する懸念や不安感を持っていることが明らかになった。

 同時に、研修医の多くが臨床経験不足を補うため、明確な研修方針、充実したマニュアルを求めるとともに、指導医から直接的かつ具体的なサポートを希望していることが分かった。

 研究グループは今回の調査結果がコロナ禍での研修医の潜在的な不安感を可視化できたとみて、研修指導内容を検討するうえで重要な情報源になるとしている。

 コロナ禍で臨床実習中止が相次いだ結果、臨床研修医は2021年度から臨床経験が不足したまま、研修を始めることが想定されていた。このため、コロナ禍の研修医にどのような支援が必要かを探る必要が出ている。

論文情報:【PLOS ONE】Transition from undergraduates to residents: A SWOT analysis of the expectations and concerns of Japanese medical graduates during the COVID-19 pandemic

関西医科大学

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